小原眞紀子さんの連作詩篇『Currency』『衡』(第16回)をアップしましたぁ。金魚屋から『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の小原さんの連作詩篇です。
我々は物理的には
立体構造物であり
精神もまた
それをなぞる
あらゆる存在に質量があり
質量があれば重心がある
年月につれ
重心はゆっくり移動する
(小原眞紀子さんの連作詩篇『Currency』『衡』)
今回は「平衡」の「衡」がタイトルです。詩篇はじっとしていることを描いています。待っているわけですね。ゆっくりと移動し、均衡を保ちながら人は待っている。時が来るのを待っているわけですが、その〝時〟というものは、人間の力で導き寄せることができる場合もあるし、できないこともある。ただ〝時は来る〟と確信できる者は希望を失うことはないでしょうね。
21世紀初頭の文学者はかなり苦しい立場に追い込まれていると思います。日本社会は貧しくなっているという統計結果も出ていますが、まだまだ安定した豊かな社会です。ただ興味もお金も分散している。一昔前は知的作業の範囲は狭かったですが、今は膨大です。昔の人は漢字はよく知っていたかもしれませんが、パソコンもネットもなかった。でも今はやることがたくさんある。お金もスマホからファッション、サブカルと使い道はいくらでもある。ただ使える額に限りがあるので、マスの金額はそれなりでも一つずつの対象に使える金額は減っている。本など読むヒマもお金もない、というのが現代人の姿です。
作家という基本的には人間存在や社会を深く考えたい人種にとって、知的興味もお金の使い方も拡散している社会はなかなか生きにくい。深く考えたとしても、即効性のある利便性を求める社会にそれが受け入れられるには時間がかかる。しかし〝時は来る〟と考えなければ作家の希望は失われるでしょうね。もちろん作家が生きている間に時が来るとは限らない。でも作家が書き残したテキスト=作品は、いつの時代でも作家の人生より長生きなのです。
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『衡』(第16回)縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『衡』(第16回)横書版 ■
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