小原眞紀子さんの連作詩篇『Currency』『歩』(第12回)をアップしましたぁ。金魚屋から『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の小原さんの新作詩篇です。今回もスピード感ある、だけどちょっとシニカルな詩です。
一歩めで石を拾い
二歩めで川を渡り
ぬれた石の輝きを
外国の宝石といい
三歩めで売って
四歩めに仕入れた
たくさんの石ころに
世界の都市の名前をつけた
パリ、香港、マラケシュ
女はギンザに
五歩めでガラスケースを並べ
六歩めに厚い絨毯を敷き
従業員に制服を着せた
いらっしゃいませ
七歩めに女たちはひざまずき
顧客に紙袋を渡す
八歩めに客たちは振り返り
九歩めに気づく
渡されたのはかつて
一歩めで躓いた石だと
(小原眞紀子『歩』)
ニヤリとしてしまう詩の止めですね。最近の小原さんの詩は地上を俯瞰して眺めるような視点で書かれていますが、今回の詩も典型的にそういうタイプです。
ところで石川、たまたまある詩誌の評論を読んだのですが、ん~はっきし言ってヒドイですねぇ。デリダとかパスカルとかなんとかかんとか、まったく詩作品の文脈を無視したゴタクが並んでいたなぁ。昨日読んだむちゅかしい本の内容を、一生懸命思い出して書いてるみたいな感じ。読者も著者自身も明日になれば忘れてしまう内容だなぁ。
作品を正確に読んで批評するのではなく、特権的でありたい、そうありたいと願う批評家の自己顕示欲がモロに出た〝創作批評〟は小説批評の世界でも見られます。だけどまだ文芸批評家の方が頭がいいですな。詩の世界はマジで頭の悪い人たちの吹き溜まりになっているように感じます。
小原さんと鶴山裕司さんには地に足がついた評論を金魚屋から出してもらいましたが、彼らの批評の書き方の方が今は少数派なのかもしれません。しかし王道であり残る仕事だと思います。彼らが今の詩の世界に近づこうとしない気持ち、石川、わかるわぁ。首まで今の詩壇に漬かった人はもちろん、中途半端に接触してもなんらかの影響は受けるでしょうね。しかし得るものはない。石川、まっとーな詩人はホントに少ないと思いますですぅ。
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『歩』(第12回)縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『歩』(第12回)横書版 ■
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