今月から原里実さんの新・連作短編小説をアップします。第1回は『キウイ』(前編)です。原さんらしい鮮烈な抒情に満ちた短編小説です。
原さんは第3回金魚屋新人賞授賞作家で、金魚屋の新人として初めて単行本『佐藤くん、大好き』が出版された若手新人作家です。『『佐藤くん、大好き』出版記念討議 フツーの恋愛小説か、新たな〝純〟文学か』で第2回金魚屋新人賞受賞者の寅間心閑さんが、「文学金魚新人賞が主張したい何かを掴みやすい小説集だと思います。文学金魚新人賞は、こういった作品に与えるんだということが、けっこうはっきりわかるような気がします」と発言しておられます。選考委員の辻原登先生と編集部の意図は寅間さんが指摘なさった通りです。
金魚屋の基本的な考え方は、純文学性とエンタメ性は総合できるということです。楽しくドキドキしながら読めて、かつ読み終えても心のどこかに残る作品が最上だと考えます。原さんの『佐藤くん、大好き』は短編集ですが、『海辺くん』『水出先生』『佐藤くん、大好き』といった作品は傑作です。原さんの小説の特徴は、ビジュアルが見えることにもあります。純文学であろうと、今後ますます小説と映像との合体化は進んでゆくでしょうね。
もちろん文学は出たとこ勝負の面があり、どんなテーマや書き方でも傑作が生まれる時は生まれます。ただ出版状況はじょじょに厳しさを増しています。今はまだ20世紀的な純文学パラダイムが残存していますが、10年後はかなり怪しい。純文学っぽい雰囲気(アトモスフィア)はあっても中身のない小説を書いていたのでは、作家は早晩行き詰まると思います。新人賞を受賞して最初の本が出ても、そこからじょじょに作家活動が低下してゆくのでは意味がありません。むしろ若い時に苦労して、年を取るほど自在に活動できるのが作家にとって一番幸せなことだと思います。
作家になりたい、作家として活動してゆきたいということは、具体的に言うと新しい作品を次々に書き続けられるということです。単行本は一冊250枚(400字詰め原稿用紙)くらいで構成されますが、最低でも年に一冊分くらいは書かないと作家の道は遠いです。現実には作家はその数倍の原稿を書いて、その一部が本にまとまるのが一般的です。もちろんすぐに継続的な執筆能力身につくわけではありません。まずは書くことを日常とすること、書いたら発表できる環境を得ることがとても大事になります。新人賞はそういった意味でも作家の登竜門です。
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■ 第7回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
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