小原眞紀子さんの連載エセー『詩人のための投資術』『第八回 不動産――春は馬車に乗って』をアップしましたぁ。金魚屋から『文学とセクシュアリティ――現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の小原さんの経済エッセイです。今回も不動産ですが、学生向けシェアハウスについてです。小原さん、常日頃からビジネスアイディアを練っておられますね(笑)。
日本社会で貧富の格差が拡大しているのは紛れもない事実です。それは大学生の半分近くが奨学金を得ていることからもわかります。卒業と同時に最低でも400万円近い借金を背負うことになってしまうわけです。これはかなりキツイ。ただ文句を言っても現実は変わらない。貧富の格差は政治のせいだと批判しても、自分の収入が急に上向くわけではないのです。自助努力しか道がないのは今も昔も変わりません。
生活費で大きなウエイトを占めるのが家賃で、一頃は収入の三分の一と言われていました。それをさらに圧縮しようという目的もあって、近頃のシェアハウスブームが起こっています。もち小原さんが書いておられるようにビジネスとしてはいろんなリスクがあります。ただ学生さんのシェアハウスについては、比較的安全なビジネスだと言えるでしょうね。
小原さんの経済エッセイは文学者には関係ないようですが、そうとも言えません。学ぶ点はたくさんあり、その大きなポイントに、視点によって社会の見方が変わる、ということがあります。不動産貸家賃貸はハイリスクです。土地建物を買って始めれば、10戸の内1戸が空き家になっても収支計画は大きく狂います。未払いリスク(借家権はとても強い)や退去に伴う修繕を考えれば、決して儲かる商売ではない。ローンは30年超でも、新築はすぐに築古物件になる。借り手側は貸し手に対して不満ダラダラが常ですが、大家の立場に立って考えれば見方がぜんぜん違ってくる。
これは他の投資ビジネスについても同じことが言えます。投資家は楽して稼いでいると思うのは正しくありません。皆さん勉強を欠かさず、その上大きなリスクを背負って投資しておられる。もちろんお金を稼いで楽しく優雅に暮らしたいという方もおられますが、お金を相対化したいという目的で投資家になった方もいらっしゃる。そういう方の考えはある種の哲学に通じます。
特に今は個人投資家の活動が、一昔前に比べて遙かに多彩で容易になっています。証券や銀行業界が苦境に立っている大きな理由の一つです。実ビジネスと金融投資が半々で、そこでのバランスを取ってゆくというのが今の投資家の理想でしょうね。
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