ラモーナ・ツァラヌさんの連載小説『No.001 時空堂』(上編)をアップしましたぁ。ラモーナさんの本格的日本語小説処女作です。上中下編の3回に分けてアップします。ラモーナさんは能楽の研究者で、能楽研究ではいわゆる台本の書き込みなどを研究します。室町時代に成立した能では基本的な演目は決まっているのですが、各時代の能楽師が様々な演出を工夫しています。それが台本に書き込まれている。そういった書き込みを読み解くのも能楽研究者の仕事です。つまりラモーナさんは、たいていの日本人より古語に精通しているわけです。
ただ研究と創作は別です。研究論文の日本語は論理の筋道がはっきりしていればOKです。また研究者だからその人が書く日本語に魅力があるとか、読みやすいというのは幻想です。研究で知識は豊富に持っていても、日本語表現が下手という方はたくさんいらっしゃいます。一般読者向けの日本語表現では、修辞はもちろん美学的要素をも取り込まなければならないわけで、高度な日本語能力が求められます。この能力が最も試されるのが創作です。母国語で論文や手紙を書けるのと魅力的創作ができるのは、まったく次元が違います。
しかしまあ研究よりも創作の方が〝More Fun〟なのも確かです。あるロックンローラーの音楽が好きというのと、ステージに立って観客を熱狂させるくらいの違いがある。もち研究を軽んじているわけではありません。研究者のタイプによっては創作を手がけた方がいい場合もあるということです。特に古典の世界はそうかもしれない。折口信夫など、古典文学の精神を創作によって掴んだ研究者は多いです。
ステージに上がったからには外国人であろうと日本語表現の質が試されます。日本語上手だねといった薄っぺらい賛辞は、作品を数作発表すればあっさり吹き飛びます。ラモーナさんは創作のステージに上がったわけですからその意志を貫徹していただきたいですね。もち楽しみながら書いてゆくのが一番大事です。
■ ラモーナ・ツァラヌ 連載小説『No.001 時空堂』(上編)縦書版 ■
■ ラモーナ・ツァラヌ 連載小説『No.001 時空堂』(上編)横書版 ■
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