青山YURI子さんの連載小説『コラージュの国』(第19回)をアップしましたぁ。『(モンゴル)×(ベネズエラ)×(韓国)=?』のコラージュの国への旅の続きです。今回は試験、テストの場面が登場します。『コラージュのマテリアルにされている。今、この空間には17人の同じ人間が必要で、僕は印刷され複製され切り取られ17人になって試験を受けている』とあります。青山さんらしい表現です。
テストは青山さんの小説には相性のいい素材かもしれません。一行ごとにテストがあるような作品ですから。問題と解答があって、それが次々に変わってゆくということでもあります。もちろん学校の試験のように、正解があるわけではないのが小説の世界です。
青山さんの30歳前後の世代に共通するのは、ある豊かさの基盤です。この豊かさは物質的なものと精神的なものが結びつくような形で表現される。戦後文学は精神先行でそれに沿ってモノが配列されていたわけですが、1990年代以降の作家はモノによって精神性を喚起されるようなところがある。
それに意識的になれるかどうかが、この世代の一つの生き残りのテストでしょうね。まず人が現れる、それと同時にモノが現れる。モノは極めて即物的で、マクドナルドやスタバやコンビニを含む。それに取り巻かれた人間がいて、そこから観念が生まれる。
つまり物質的豊かさに取り囲まれた人間が、モノそのものに沿って観念を伸ばしながら、物質万能世界からどうやって抜け出るのか。そういった問題が豊かな高度情報社会の一つのアポリアになるかもしれません。ただいつの時代でも作家は迷っていてはダメ。あるとっかかりを得たら、一点突破で表現の地平を獲得していかなければなりません。
■ 青山YURI子 連載小説『コラージュの国』(第19回)縦書版 ■
■ 青山YURI子 連載小説『コラージュの国』(第19回)横書版 ■
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