寅間心閑(とらま しんかん)さんの連載小説『助平(すけべい)ども』『十三、脳は揺れている』をアップしましたぁ。糸が複雑に絡み合った小説になりそうです。
テクニカルな話ですが、小説ではまず登場人物を設定しなければなりません。登場人物が少なければ、小説は基本、短くなります。また作家があらかじめ、小説で何を表現したいのかはっきりつかんでいないと、途中から思いつきで登場人物を増やしてもたいていうまくいきません。
次にこの登場人物を動かすために、時間と空間を設定します。学生や社会人など、登場人物の設定によって、だいたいの場所は決まっているわけですが、それを横空間にどれだけ拡げるか、またどのくらいの時間で登場人物を動かすのかを決めるわけです。
こういったことは小説文学の基本です。意外と厳密に小説は作られているのです。この小説文学の鉄板を壊そうとするのが純文学であり、前衛小説です。ただ壊すには普通の小説を書く以上の力がいる。作家に技術力がなくても、前衛小説を書くんだという強い意志が必要です。ただま、石川はいきなり純文学や前衛小説など、本質的に高度な技術と思想を必要とする小説を書くのはお勧めしません。
もっと初歩的なことを言うと、創作は作家の思想や感性や技術の貧しさを思い知る通過儀礼でもあります。書く前は無限の可能性があるように思え、他者の本を読んで『こんなのたいしたことない』と思っていても、いざ実際に詩や小説を書いてみると、ぜんぜん思い通りの作品が書けないのが普通です。つまりたいていの作家が本来的に抱えている思想や感性や技術は貧しい。
この創作の初歩的通過儀礼の衝撃を、作家は真正面から受け取る必要があります。つまり、持って生まれた才能なんてない、あるいは当てにならないと思い知ることです。そこからしか本当の創作は始まりません。一番イケナイのは自分を甘やかすこと。自分の作品は素晴らしいと愛してしまうことです。自己も作品も突き放さないと、文学作品は社会性を得られないのです。
■ 寅間心閑 連載小説『助平(すけべい)ども』『十三、脳は揺れている』縦書版 ■
■ 寅間心閑 連載小説『助平(すけべい)ども』『十三、脳は揺れている』横書版 ■
■ 第6、7回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
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