寅間心閑(とらま しんかん)さんの連載小説『助平(すけべい)ども』『十二、ふたりの世界』をアップしましたぁ。良い感じで小説の圧が高まっています。落とし所が決まれば秀作になりそうな作品ですね。
小説という芸術は意外と底固い形式を持っています。私小説的純文学には作家の個人的体験が反映されがちで、エンタメ大衆小説ではそれが希薄な傾向があるとは言えます。ただどちらの場合も作品の正念場では作家の思想が問われます。私小説では個から普遍に抜け、大衆小説では普遍(一般)から個の思想に突き抜けるのだと言っていいかもしれません。プライベートな主題であれパブリックな主題であれ、作家がどうしても表現したい核がなければ小説は弱くなります。
また作品主題をどう表現するのかがテクニックになります。この小説テクニックは極めてオーソドックスなものだと考えていいです。お気に入りの小説を10冊くらい選んで、最初の10ページくらいを手書きで書き写してごらんになるといいです。中には2、3冊、前衛的書き方の小説も混じっていると思いますが、ほとんどの小説が平明でわかりやすい文章で書かれているはずです。それを初手から崩すのはお勧めしません。むしろオーソドックスな書き方で小説を書き上げてみれば、小説文学の可能性と限界がわかります。これは学習です。他者の小説を読んで自分で習得するしかありません。
モヤモヤとした無限大に思えるような作品主題を抱えていても、文字を通してそれを他者にわかりやすく伝えるには多くの制約があります。作品は長くても短くても小さな器なので、複数の作品主題を詰め込むことはできません。絞り込む必要がある。この主題の絞り込みが上手くいってないと、小説の書き方、つまりテクニックが崩れてしまう。それを前衛と評価してくれるほど文学の世界は甘くありません。崩れているのか崩しているのかははっきりわかる。主題(思想)とテクニックのバランスはどんな場合でも大事なのです。
■ 寅間心閑 連載小説『助平(すけべい)ども』『十二、ふたりの世界』縦書版 ■
■ 寅間心閑 連載小説『助平(すけべい)ども』『十二、ふたりの世界』横書版 ■
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