原作・小原眞紀子、作・露津まりいさんの連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第21回)をアップしました。第11章『魂の真っ赤なオーブン』(下編)です。石川は偶然と不運が重なって追い詰められてゆく主人公彩子さんに密かに同情していたのですが、最後にまたドンデン返しが起きそうですね。もち小説なので主人公に人権はありません(爆)。ただこういう形で登場人物を追い詰めるのに、どんな意味があるのかは文学の大事な問題です。
ちょいと厳しいことを書くと、文学者ってすんごく甘いところがあります。文学作品は〝雰囲気(アトモスフィア)〟だと思ってるところがある。いわゆる文学的〝香気〟といったものですね。そういう甘いことを考え言う人たちは帰納的思考を持っています。過去の名作をなんとなくなぞればいいと思っている。そのくせ自分の作品が評価されるときは、アトモスフィアじゃなくて〝思想〟があると言われると大喜びしたりする。甘いねぇと思います。文学以外の世界ぢゃ、そんなぬるい考え方は通用しません。
論理的に説明できるかどうかは別として、優れた文学とそうじゃない文学を隔てるのは作家の思想です。この思想の核がなければ間違いなく純文学的文体をなぞった駄作になる。文学者になりたい、だけど自己の表現欲求の核である思想をつかむのはイヤ、何を表現したいのか考え詰めるのもイヤ、他者の作品を読むのもイヤ、ただなんとなく書いて、あわよくば評価されたいというのでは、自分の隣にいて書いている同類作家と同じ。多少目立つことををしてもすぐに忘れ去られます。
政治経済科学などのジャンルで、原理を捉えて既存の現代的知を一気に変えようとする動きが顕在化している現代において、文学は明らかに後衛になっています。既存権威と利権を死守しようとしている。しかしそれは自殺行為だと思います。文学でもまた、原理をおさえて現代社会の核心的思想をつかめなければ秀作は生まれません。それが版元や書店の都合で純文学とジャンル分けされる必要は全くない。サスペンスでもホラーでも歴史小説でも可能。純文学的純文学が文学なのだと考える思考自体が後衛です。
■ 原作・小原眞紀子 作・露津まりい 連載サスペンス小説『お菓子な殺意』第11章『魂の真っ赤なオーブン』(下編)(第21回)縦書版 ■
■ 原作・小原眞紀子 作・露津まりい 連載サスペンス小説『お菓子な殺意』第11章『魂の真っ赤なオーブン』(下編)(第21回)横書版 ■
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■