純文学エンターテイメント作家、遠藤徹さんの連載小説『ムネモシュネの地図』『第07回 (二)象の頭(象さん・イン・密室)(下編)』をアップしましたぁ。石川、種山教授が大好きです。この人のウンチクがツボにはまるんですなぁ。博覧強記的知性が好きなわけではなく、種山教授のある種偏った知の体系の作り方が好きなのであります。
ネット時代は情報化時代ですが、情報には価値があるようでないところがあります。「そんなことも知らないの」と言って優越感に浸れた時代は過去のことで、今じゃググればたいていの情報は得られる。情報といってもその鮮度や秘匿の度合いが価値を生む。公開されている情報はすべてフラット。頭の中に多少人よりたくさんTipsを詰め込んでいても、それがどーしたという時代であります。
ですから問題は情報を使った知の組み立て方になります。人間の知性はある方向を持って延伸してゆきます。知のベクトルに沿って情報が集められ体系化されてゆくわけです。この構造は昔から同じですが、情報化時代になって体系がランダムで複雑になった。一昔前よりクロスジャンル的に様々な情報が結びついて体系を作れるようになっています。
ただ百科全書的知の体系は現代ではあまり意味がありません。んなものはネットのストレージに丸投げすればよろし。極端を言えば非常に優れた知性なのに、はっきりとした歪みが見いだせなければ人間的営為とは言えない。そしてこの歪みは原初的な暗さと不合理な欲望に基づいているものです。種山教授、意外と暗い方かもしれません。
人は肉体的見た目ほど精神は年老いていないものだというのが石川の人間観察の結論めいたものですが、それでも人は成熟していかなければなりません。ただ成熟すること、老いることはそう簡単ではないです。自らの歪みを自覚して、大多数の倫理や論理をスッと離れて自足しながら他者と交わるのが理想かもしれません。種山教授は孤独な方でもあるでしょうね。
■ 遠藤徹 連載小説『ムネモシュネの地図』『第07回 (二)象の頭(象さん・イン・密室)(下編)』縦書版 ■
■ 遠藤徹 連載小説『ムネモシュネの地図』『第07回 (二)象の頭(象さん・イン・密室)(下編)』横書版 ■
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■