ドイナ・チェルニカ著、ラモーナ・ツァラヌ訳、No.010『少女と銀狐』をアップしました。『第12章 銀狐は大切なゆびわを見つける』です。森の中の物語です。汎神論的雰囲気が漂いますねぇ。東洋思想に近い循環的世界観が前提になっているのかもしれません。
石川などが汎神論的物語ですぐに思い出すヨーロッパの古典は、ゲーテの『ファウスト』です。森鷗外大先生が翻訳なさいました。ゲーテは『ファウスト』完成までに40年近くをかけました。第二部は死後刊なのでまだまだ手を入れるつもりだったのかもしれません。
第二部はギリシャ神話の世界が援用されます。日本人にとってはギリシャはヨーロッパの文化的起源でキリスト教と地続きじゃんということになると思いますが、違います。キリスト教ヨーロッパにとって、ギリシャは多神教の東方異教世界です。ゲーテはどうもギリシャ的汎神論文化とキリスト教文化の弁証法的統合を考えていたようですが、それはとっても困難だった。『ファウスト』が単純な物語なのに難解で、奇妙な雰囲気の物語になっている理由だと思います。
『少女と銀狐』では天界からやって来た銀狐はある種の聖性を持っています。しかしこの聖性は特権的でも超越的でもない。むしろ地上の様々な動植物によって聖性は浸食される。しかし俗であるはずの地上の小さな生き物たちの中に再び聖性は見出される。不思議な物語であります。
■ ドイナ・チェルニカ著 ラモーナ・ツァラヌ訳『少女と銀狐』『第12章 銀狐は大切なゆびわを見つける』縦書版 ■
■ ドイナ・チェルニカ著 ラモーナ・ツァラヌ訳『少女と銀狐』『第12章 銀狐は大切なゆびわを見つける』横書版 ■
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■