原作・小原眞紀子、作・露津まりいさんの連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第20回)をアップしました。第11章『魂の真っ赤なオーブン』(上編)です。いよいよ追い込みで手に汗握るスリリングな展開になってまいりました。人間追い詰められた時が勝負です。
小説には基本的なルールがあります。一番簡単で強力なルールは物語です。物語、つまりプロットがしっかり立っていれば文章が多少下手でも読める小説になります。細部まで詰めたプロットであれば自ずから登場人物造形もしっかりしてきますから、より読みやすい小説になります。この物語中心に小説を捉えてゆけば、読みやすくて面白い小説になる。つまり大衆文学の原型が出来上がります。でも若い作家や人とは違うことをしたい意欲的作家はそれだけぢゃ満足できない。プラスアルファを求めるわけで、それが純文学のスタートラインになります。
石川が見ていると純文学作家には三つくらいのタイプがありますね。一つはどーしても普通の小説が書けない作家。そういう作家は生まれつきとか資質としか言いようのない表現の核を抱えている。だから奇妙な作品でも説得力がある。ただしこのタイプはすんごく少ないです。二つ目は変わった小説が書きたいだけの作家。たいていの純文学作家とか前衛作家がそうですね。大衆的物語小説の関節を外そうとする。純文学や前衛小説について語らせると饒舌ですが、常に小説王道との対比で新しい小説を考えるので底が浅い。また小説論を語ってもどこかで聞いたことがあるような能書きが多いですねぇ。三つ目は小説王道を知り尽くした上で新しい試みをする作家。このタイプの作家が一番強い。
文学金魚は総合文学の純文学メディアですが、純文学の捉え方が今までとは違います。もちろん実験系の小説は大歓迎ですが、いっけんサスペンスやホラー、恋愛、歴史小説の型にはまっているように見える小説でも純文学的要素が強ければ純文学だと考えます。じゃ純文学的要素は何かと言うことになりますが、簡単に言えば作家の強い思想です。純文学は形式ではないということでもあります。露津・小原さんコンビの小説はサスペンスですが、十分純文学の要件を満たしていると石川は思いますぅ。
■ 原作・小原眞紀子 作・露津まりい 連載サスペンス小説『お菓子な殺意』第11章『魂の真っ赤なオーブン』(上編)(第20回)(縦書)版 ■
■ 原作・小原眞紀子 作・露津まりい 連載サスペンス小説『お菓子な殺意』第11章『魂の真っ赤なオーブン』(上編)(第20回)(横書)版 ■
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■