ドイナ・チェルニカ著、ラモーナ・ツァラヌ訳、No.009 『少女と銀狐』第11章をアップしました。『カタツムリがカラからでて、子どもたちがなかへはいる』です。ドイナさんによる、ルーマニア的なちょっと奇妙な手触りのファンタジー小説です。
20世紀後半から世界は〝ポスト・モダン世界〟に入っています。インターネットを中心とする高度情報化社会の到来によって、それは現実の裏付けを持つ人間認識・感情になりました。ポスト・モダン世界では、従来のヨーロッパ社会が多かれ少なかれ認識の軸としてきた神という中心がありません。神どころか中心と呼べるものはほとんど存在しない。あるのは無限に広がる関係性総体であり、それが絡まり合って擬似的な中心と呼べる突起点を作り出してゆく。ただそれが固定的かつ永続的中心となることはないのです。
ドイナさんの『少女と銀狐』は汎神論的世界を背景としているという意味で、ポスト・モダン小説です。自然の循環性がバックボーンになっているわけですから、東洋的と言える面もあります。でもヨーロッパの作家の作品なのです。東洋的汎神論世界(精神世界)とはどこか違うポイントがいずれ現れてくるでしょうね。
また日本人は例によって例のごとく、やれ実存主義だ、ほら構造主義だ、今度はポスト・モダニズムだとヨーロッパ思想に飛びついたわけですが、それは一種の表層的思想流行に過ぎません。ヨーロッパ人が〝発見〟したポスト・モダニズムは東洋思想に近い面があるわけですから、ここから学ぶ点は別にあります。端的に言えば東洋文化の〝中心〟ですね。それは神のイマージュを伴いませんが必ずある。まごまごしていると、ドイナさんのようなヨーロッパ人作家に『東洋の思想構造はこんな感じで、中心はここでしょ』と指摘されちゃうかもしれませんよ(笑)。
■ ドイナ・チェルニカ著 ラモーナ・ツァラヌ訳『少女と銀狐』第11章 縦書版 ■
■ ドイナ・チェルニカ著 ラモーナ・ツァラヌ訳『少女と銀狐』第11章 横書版 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
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