佐藤知恵子さんの文芸誌時評『大衆文芸誌』『No.118 千早茜「卵の殻」(オール讀物 2017年05月号)』をアップしましたぁ。千早茜さんの「卵の殻」を取り上げておられます。「卵の殻」は女性同士の友情を描いた小説です。千早さんは『女の友情はもろいから、ちょっとした環境の違いでひびが入るから、こうやって同じように進んでいくのが一番正しい道。そうしなきゃ、一人ぼっちになってしまう』と書いておられますが、もちろんこれは反語です。
佐藤さんは『このモヤッとした終わり方は女性作家さまの独断場ねぇ。千早先生は「卵の殻」では描かなかったですが、いつまでも同じで一緒なんて幻想よ。その幻想崩壊がほのめかされてるから「卵の殻」はモヤッとした秀作なの』と批評しておられます。また佐藤さんはそれを男性性ベクトルと女性性ベクトルで論じています。『男性性の特徴は観念の強さですわ。ある見通しというかヴィジョンを捉えると、あきれるほどの高みにまで、すんごい短期間でスーッと昇っていきますの。あれよあれよって感じよ』ということです。生物学的違いではなく、男性性とは孤独のベクトルのことですね。
作家は基本、孤独で孤立しています。最初は同人誌などで出発することもありますが、今にまで語り継がれるような同人誌って、ことごとく空中分解しています。なぜか。孤独に伸びてゆこうとする作家が、同人誌が安全保障的なぬるい場になることを嫌うからです。まあどの組織にも〝置いてかないで〟的な人はいます。ある時点まで来ればバッサリ切り捨てないと先に進めない。前方にはより優れた作家たちのせめぎ合いが待っているからです。
佐藤さんは『「一人ぼっちになってしま」った時から現代的な男性性ベクトルが作動するの。そして一人ぼっちでいられるのは女性性基盤とは別の、現代的観念ベクトルを掴んでいるという実感があるからね』と批評しておられますが、その通りでしょうね。作家だって単に孤独な状態にはいつまでも耐えられない。誰がなんと言おうとこれは正しいというヴィジョンを掴んでいる作家が孤独に耐えられるわけです。
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評 『大衆文芸誌』『No.118 千早茜「卵の殻」(オール讀物 2017年05月号)』 ■
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