寅間心閑(とらま しんかん)さんの連載小説『松の牢』(第06回)をアップしましたぁ。家族の過去と秘密がじょじょに明らかにされてゆきます。不在の人が起こした出来事が、何十年後かにその一種の〝結果〟として現れてくるわけです。こういった不在が中心になるのは、寅間小説の一つのテーマかもしれないなぁ。
これは一般論ですが、テーマを抱えている作家の場合、創作活動は二つの方向に進みがちです。一つはテーマの力が強すぎて、それを表現し切ったと納得しない限り、次に進めないケースです。固有テーマを様々に表現しているうちは多作なのですが、表現し切ったとたん、書くことがなくなり、ムリに書いてもテンションがグッと落ちる場合もあります。
もう一つはテーマが外在的にもたらされたものでなく、作家の実存に即した内在的なものなので、テーマはあるんですがそれ自体が様々に発展してゆくケースです。テーマを抱えている以上、書き切らなければならないのですが、書き切ったと思った途端、まだ書いていない余白がいくらでも湧き出すわけです。個人的なテーマのはずなのに、底のところで広い社会性を備えていることを見出した場合と言ってもいいでしょうね。
寅間さんの場合は恐らく後者でしょうね。不在が必ずと言っていいほど社会的事象に結びついています。ただなぜその不在のテーマが生じたのかについては、いずれストレートに表現しなければならないのかもしれません。
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