山本俊則さんの美術展時評『No.072 『雪村--奇想の誕生』展』をアップしましたぁ。東京藝術大学大学美術館で開催された雪村展のレビューです。雪村は室町後期の禅僧絵師です。色絵も描きましたが、室町絵画の華はやっぱり水墨画ですね。日本で水墨画が全盛になるのが室町時代であり、その代表的作家が雪舟と雪村らです。
展覧会のタイトルが『雪村-奇想の誕生』であるように、雪村は奇妙な画を描いた画家として認知されつつある。この〝奇想〟という言葉は昨今流行だ。伊藤若冲や曾我蕭白に対しても言われ、長い間王道とされてきた円山応挙らの人気を凌ぎつつある。わたしたちが彼らの絵に現代的な画家の自我意識を見るからである。画家固有の創造性が画に表現されているならば、それは現代絵画の評価と地続きである。
しかしそれは、歴史に即せば留保が必要な賛辞だ。雪村や若冲、蕭白は同時代のメインストリームを歩いた絵師ではない。逆に言えば、同時代に確固たるメインストリームが存在していたからこそ、彼らは弱小絵師として少しだけ自由な表現を試みることができた。
山本俊則
外国人が好意的視線で他国の文化を見ると、しばしば〝幸福な文化的誤解〟が生じることがあります。ただ異文化同士の接触の際だけ幸福な文化的誤解が生まれるわけではない。時代ごとに変わってゆく過去の作家の評価にもそれは紛れ込んでくる。山本さんが書いておられるように、雪村や伊藤若冲、曾我蕭白の〝奇想〟を過大評価するのもその一種だと思います。日本人ならそれは、多分に客寄せのキャッチだと気がつかなければなりません。
もちろん文化的誤解はいつだってインスピレーションの源です。だけど現代の情報化社会ではすぐに化けの皮が剥がれる。文化的誤解を選択するにしても、本筋とのズレを十分に認識把握した上で行わなければなりません。ここでも従来的な、茫漠とした創作者の直観やインスピレーションの神話は終わりつつあるわけです。
■ 山本俊則 美術展時評『No.072 『雪村--奇想の誕生』展』 ■
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第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
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