鶴山裕司さんの演劇金魚『No.013 新宿梁山泊版『腰巻おぼろ 妖鯨篇』(下編)』をアップしましたぁ。鶴山さんの『腰巻おぼろ』劇評完結編です。ある意味エゴ剥き出しの登場人物たちが交錯する唐演劇では、殺し合いなどの極端に至らないと物語が終わらないようです。しかしそれは殺し合いのための殺し合いではなく、ある秩序を求めている。
『腰巻おぼろ』では、テントと並ぶ新宿梁山泊の代名詞である水とクレーンを使った演出が、最後の瞬間だけ使われた。イサリビの乗ったキャッチャー・ボートが花道から現れ、捕鯨用の大砲を大音響で撃つと、舞台から大量の水が噴き出す。舞台後方の幕が落ちるとそこは海だ。水をかぶりながらおぼろとガマ少年は海へと入ってゆく。黒々とした巨大な鯨の尻尾が海の中から突き出して揺れる。彼らはついに鯨の腹の中から出たのである。
ただこの描写は唐の台本にはない。金守珍が唐の台本を、その意図に沿って大胆に舞台化したのである。アングラテント劇に大劇場の蜷川演出を導入し、唐の台本をわずかだが決定的に違う形で解釈することに金守珍版唐演劇の今があるだろう。
鶴山裕司
鯨の腹の中に閉じ込められた主人公らが、腹の外に出るというのが最も単純化した『腰巻おぼろ』の筋のようです。しかそんなレジュメはあんまり意味を持たないな。唐作品、決して何かに要約したり還元したりできない複雑な有機体のようです。こりゃ恐るべきテキストで演劇だなぁ。
■ 鶴山裕司 演劇金魚 『No.013 新宿梁山泊版『腰巻おぼろ 妖鯨篇』(下編)』 ■
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