大篠夏彦さんの文芸誌時評『文芸5誌』『No.106 砂川文次「熊狩り」(文學界 2016年11月号)』をアップしましたぁ。砂川文次さんの文學界新人賞受賞第一作「熊狩り」を取り上げておられます。大篠さんは『主人公の名前が「K」であることはわたしたちにカフカの『城』を想起させる。(中略)また「熊狩り」のドメスティックな雰囲気から安部公房の『砂の女』を思い出す読者もいるだろう』と書いておられます。
で、ちょっと辛めの評価です。大篠さんは『Kは生きている人間なら決して逃れられない法や規則を意識して、自ら町の住人になったのだと言っていい。しかしその説得力は低い。枚数的にも内容描写的に不十分だ。法(規則)はそれが絶対だと認識した者にとってのみ実体あるものとして立ち現れる。法を破る者の殺害は主題ではない。抽象的だが実在する不可解な法の力をこそ描かなければならない』と批評しておられます。砂川さんは書き続けられるでしょうから、「熊狩り」一作で評価が定まってしまうわけではないですが、枚数と主題のバランスが取れていないな、と石川も思いました。
小説では枚数と内容のバランスが絶対的に重要です。500枚であるべき作品を100枚にまとめようとすれば間違いなく失敗します。その逆も同じです。ただこれは意外と難しくて、プロの作家でもときおり枚数の計算間違いをすることがあります。十分考えて書き始めたはずなのに、もっと長くしないとダメだった、短くまとめるべき作品だった、ということがあるわけです。
別に文学金魚の優位性を言っているわけではないですが、紙媒体の雑誌は当たり前ですが枚数にうるさい。30枚と言ったら30枚なのです。足りなくても長すぎても書き直しです。30枚のところを33枚書いたらどやしつけられます。それはそれでライティングの訓練になりますから、何度もやってみた方がいい。ただデビューするかしないかの作家に枚数を課して小説を書かせるのは酷だな。まず好き勝手に書かせてみて、そこから枚数と内容に問題があれば修正すればいい。
ただま、作品はビミョーなもので、修正してオリジナルよりアップする魅力の割合は10パーセントくらいです。もちろん一つの作品をきちんと仕上げるのは大事な作業ですが、基本、書いたらさっさと発表して、問題点を自分で把握できたら次の作品に取りかかった方がいい。箸にも棒にもかからない作品はどのメディアでも却下されるでしょうが、ビミョーな作品が一番作家を悩ませるのです。そういう作品はとっとと在庫整理した方が、精神衛生上良いです。
■ 大篠夏彦 文芸誌時評 『No.106 砂川文次「熊狩り」(文學界 2016年11月号)』 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
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