鶴山裕司さんの連載エセー『言葉と骨董』『第056回 ヨルバ族のオポン・イファ(後半)』をアップしましたぁ。チュッオーラの『やし酒飲み』は、『毎日たらふくやし酒を飲んでいた男が突然パラダイスを失い、地獄である危険なブッシュを彷徨って再びパラダイスを取り戻すまでの物語である』と鶴山さんは定義しておられます。つまりダンテ『神曲』やバニヤン『天路歴程』にも比すべき、ヨルバ人作家による創作的神話物語だということです。
ヨーロッパでは文学者だけでなく、ユング派の心理学者も『やし酒飲み』に強い関心を示した。ユングは人間の無意識領域の根源には元型(アーキタイプ)があると仮説した。民俗や宗教が違っても、確かに人間存在に共通で普遍的と呼べるアーキタイプは存在するからである。(中略)
多分深層心理にあるアーキタイプは言葉を発せず、しかし具体的で変幻自在な姿かたちをして蠢いているだろう。それが意識に近いところまで浮上してくれば言葉に近づくはずである。(中略)『やし酒飲み』のある種不気味な手触りは、人間の深層心理に存在するアーキタイプの姿を驚くほど具象的に、だが熱もなく淡々と外面から描いていることで生じているように思う。
(鶴山裕司)
チュッオーラの『やし酒飲み』を楽園喪失と地獄巡り、そして楽園の回復という神話的文脈で読み解いたのは鶴山さんが初めてだろうな。でもまあ、少なくともそう読まなければ、『やし酒飲み』という荒唐無稽な物語はちっとも面白くない。またそれが人間の深層心理に直結した部分を持っているのも確かだと思います。じっくりお楽しみください。
■ 鶴山裕司 連載エセー『言葉と骨董』『第056回 ヨルバ族のオポン・イファ(後半)』 ■
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