小松剛生さんの連載ショートショート小説『僕が詩人になれない108の理由あるいは僕が東京ヤクルトスワローズファンになったわけ』『No.026 キャベツ理論/コオロギと殺し屋 (1)/コオロギと殺し屋 (2)』をアップしましたぁ。今回は『コオロギと殺し屋』の連作が始まりました。小松さんのショートショート小説は、基本読み切りなのですが、ときおり連作が混じるといふ特徴があります。
『コオロギと殺し屋 (2)』に『彼はネット情報のなかでもウィキペディアを特によく漁(あさ)った。完全な信頼を置いてもいなかったが(中略)それでも子ども向けに作られた図鑑のページと同じかそれ以上に詳しく、コオロギに関する内容が載っているようには思えた』という記述があります。ウィキをググルのはもう日常ですよね。ただこういった情報化社会を文学で表現するためには、作家は多かれ少なかれ現実世界を相対化している必要があります。
果てしない情報化の大海にいるということは、人間が世界中の情報を受容できる擬似的万能の智者になれるようでいて、その実、世界が断片化するということでもあります。情報の海には中心がないのですから、いくら情報を集めても、世界の断片の集積にならざるを得ないところがあるからです。
小松さんの小説は、このような現代社会のスキームを正確に反映していると思います。ですからショートショートという断片の集積の中に、ある一貫した物語が入り込むということにも大きな意味があるはずです。それは最終的には書物という形でなければ、一つの完結した世界生み出せないでしょうね。同じ書物でも、小松さんの書物は従来のそれと、微妙に質の違うものになるはずです。
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