大野ロベルトさんの連載映画評論『七色幻燈』『第04回 劇場で激情に駆られること』をアップしましたぁ。今回は映画の中の〝赤色〟がテーマです。スクリーンが巨大だということもあって、映画作家は色に特徴を持たせることが多いですね。中には色でしか記憶していない映画もある、とか言い出すと、蓮実重彦センセ的な映画批評になっちゃうかな(笑)。でもま、長編映画で色を統一するのは大仕事です。現在はデジタルなのでかなり色調補正は可能ですが、それでもライティングの設定に長い長い時間がかかるのが映画撮影の現場のやうです。
定番の色、と呼べるものがいくつかあるとして、赤は間違いなくその一つであろう。美しい連想を引き起こしやすい色ではあるが、英雄の色でもあるから、少年も赤を嫌がらない。美と力強さを兼ね備えたこの色はしかし、否それゆえに、死に直結した色でもある。元気で、楽観的で、自信満々な様子を形容する英語に sanguine があるが、sang はもちろん血の意味だから、これは中世生理学の「多血質」に端を発している。日本語では「血色がいい」のは喜ぶべきことだが、「血の気が多い」のは迷惑である。何にせよ、真赤な血が滾れば力も湧くが、うっかり流してしまえば命が枯れる。表裏一体、両極の同時的な発露を示唆するあのファルマコンの概念は、血にもまた当てはまるわけだ。
(大野ロベルト『劇場で激情に駆られること』)
赤を巡って大野さんは、イングマール・ベルイマン監督の『叫びとささやき』、スタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』、バズ・ラーマン監督の『ムーラン・ルージュ』、ウディ・アレン監督『カイロの紫のバラ』を取り上げておられます。ベルイマンやキューブリック監督の撮影現場は悪夢だっただろうなぁ。ものすごい完成度、といふことは、時間と労力がかかっているのであります。この渾身の赤の意味については、コンテンツをお読みになってお楽しみください。
■ 大野ロベルト 連載映画評論 『七色幻燈』『第04回 劇場で激情に駆られること』 ■
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