小原眞紀子さんの連載純文学小説『神違え』(第05回)をアップしましたぁ。非現実は現実逃避ではないんだなぁ。小原さんの『神違え』では、現実にのめり込めば込むほど、人間の中に非現実が生じてくることが鮮やかに描かれています。ただこの非現実、時に現実を変えるような力を持つことがあります。
鈴丸守は難しい顔をしていた。
「公園脇の御所宅に、か。跡でも尾けたのか」
来林の長は頷いた。三日間を費やし、尾行したのだと言う。
「もし、番台の大都との繋がりがわかったら、」
それは俺が調べる、と守は長を遮った。
「あの番台を選んだ責任がある。だから、あんたはもう」
呪術を、と長はまた、わたしに懇願する。
「A4用紙一枚分で」
来林の長が言うには、わたしの呪術とは、ようはペーパーなのだった。
住民を熱くさせ、興奮を巻き起こし、さらに判断を正当化し、それに賛成の者も反対の者も、じっとしていられなくなるアジテーションの言葉。浮き足だった住民が、自ら事故を起こしたり、あるいは起こった事故に憤ったり、何かと何かを結びつけ、あらぬ噂が湧き上がる。
(小原眞紀子『神違え』)
マンション管理会社の交代を巡る攻防が『神違え』の主題ですが、現理事長の『来林の長』は実績を残し、マンションに銅像が建つことを夢見ています。そのためにはマンションの歴史を綴った『年代記』も必要です。この構造、政治とか国家とか、マクロな社会にも当てはまりますね。んで実際に銅像が建ち年代記が完成して年月が経てば、それは多かれ少なかれ神話的になってゆくのですぅ。
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