佐藤知恵子さんの文芸誌時評『No.019 オール讀物 2015年05月号』をアップしましたぁ。乾ルカさんの『伴走者』を取り上げておられます。主人公は某大手総合出版社の元編集者でラノベを担当していました。しかし不況でリストラにあい故郷に戻って再就職します。その最就職先の上司が、かつて主人公が担当していたラノベ作家だったのです。このラノベ作家に、仕事とはいえ主人公はひどい仕打ちをしていました。3冊本を出したのですが1冊も売れず、主人公は「もうなにも送らないでください。あんたの原稿読むのは、編集者としても読者としても苦痛なんです。あんた、才能ないんですよ!」と言って、作家を見捨ててしまったのです。これ、誇張してありますが、大筋では多分実話だと思います。
乾ルカさんの『伴走者』は、昨日アップした山田隆道さんのインタビューにも内容的に重なる点があります。ラノベやエンタメ小説家を目指しておられる皆さんは、情報収集の意味でも今回の佐藤さんの時評をお読みになることをおすすめします。情報収集の本質は、〝相手の立場に立って考えること〟です。エンタメ系の出版社や編集者が何を考えているのか把握できなければ、道は開けないでしょうね。これは善し悪しの問題ではなく、超えていかなければならないハードルです。ただこのハードル、けっこう高いです。夢を見ていたのでは絶対に超えられません。
ただビジネスウーマンの佐藤さんの批評はさらに厳しいです。『「あんた、才能ないんですよ!」と罵倒される佐倉ツカサは気の毒ですわ。でも佐倉さんは、なんで一から十まで編集者の言うとおりになさるのかしらね。ご自分の作品に自信がないから人の言うままになっているんだと言われれてもしかたないわね。戸井の指示通りに改稿して売れなかったという結果の方が重いのか、自分の意志を貫いて売れないという結果になった方が傷が深いのか、考えどころよ』と書いておられます。身も蓋もないけど、これはこれで突き刺さる事実です。作家の前に現実のハードルはいくつも現れ、次々にそれを超えてゆかなければならないといふことでせうね。
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評 『No.019 オール讀物 2015年05月号』 ■
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