佐藤知恵子さんの文芸誌時評『No.015 オール讀物 2015年01月号』をアップしましたぁ。井上荒野さんの『歌いたいの』を取り上げておられます。井上荒野さん、いい作家さんです。んで決まる時は決まるんですが、けっこうボール球も多い作家さんかなぁ。井上さんに対する業界の注目度は高いと思いますが、今ひとつフォーカスが合ってない感じなんだな。ビシッとロックオンすると、ポンと化ける気配のある作家さんなのでありまふ。
『歌いたいの』は癌闘病中の人妻が、かつてのボーイフレンドと寝る話しです。佐藤さんは『このテーマでこの枚数は短すぎると思いますわ。「失望ではなく理解」と言うなら、そこに辿り着かなければならないと思うわけでございます。(中略)少なくとも夫以外の男と寝るということが、この小説の核心的テーマではないことは確かよね。アテクシ、井上荒野先生の大ファンですの。つまり、もっと続きが読みたいのよ』と批評しておられます。石川も同感ですぅ。もっと続きが読みたひですぅ。
佐藤さんはまた、『エンタメにも純文学にも分類できない、そこはかとないコードからどうしても外れてしまう作家様はいらっしゃいますわ。(中略)お作品って要するに内容で、エンタメなのか純文学なのか、どの雑誌に掲載されるかなんて読者にはなんの関係もないことよ。でも作家様の確信が揺らいでいると、現実に存在する文学界のコードに引っ張られて中途半端な作品になってしまうの』とも書いておられます。
作家を含む創作者には夢がなければならなひと思います。しかしもし夢が実現すれば、それは現実世界での出来事です。そして現実はいつだって厳しい。はっきし言えば、自分の好き勝手に書いて世の中で認められることはまずないです。好きに書いて評価を得られる自由を得たいと望むなら、現実世界で残酷なまでに張り巡らされたコードを心底理解し、それを乗り越えた審級で作品を書き発表してゆくしかなひのでありますぅ。
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評 『No.015 オール讀物 2015年01月号』 ■