日本が誇る世界的特殊作家、三浦俊彦さんの連載小説『偏態パズル』(第76回)をアップしましたぁ。三浦センセの連載になると、石川、なぜかホッとしますです。なにか故郷に帰ってきたやうな、個室にこもってうんうんしているやうな(爆)。常同性とそれをざわめかせる波動が『偏態パズル』にはあるんだなぁ。
■ 金妙塾の文化的自意識醸成そのものというよりは、文化的自意識醸成に印南哲治が果たした貢献を持ち上げる風潮の方は、なるほど印南の「達人体質」のなせる業ではあった。客観的に見て、印南は実のところ金妙塾に何か革命的な新風を吹き込んだわけではない。貢献度認定がなぜか独り歩きしたのである。この誰が頼んだわけでもない自発的な「過大評価」が印南の自意識を徐々に追い詰めてゆくことになる。
今回は金妙塾生の老医師のレポート発表から始まるのですが、彼はおろち道に復帰できたのは『印南先生のおかげです』と言います。しかしそれはすぐに否定される。印南がいると、『彼が一言も発しないときであれ、中心テーマまっしぐらが通例の金妙塾勉強会には珍しく非おろち系ディべートによる中断が散見されることしばしばだった』とあります。それが『誰が頼んだわけでもない自発的な「過大評価」』となり、『印南の自意識を徐々に追い詰めてゆくことになる』わけです。
『偏態パズル』はおろち道といふ危ういテーマを巡る小説ですが、単なるフィクショナルな物語ではありません。むしろ荒唐無稽なフィクションに近づけば近づくほど、現実世界との接触と摩擦が増えてゆくという構造を持っています。そういふ意味で、印南さんは金妙塾生のフィクショナルな議論をリアルにつなぎ止め、現実との軋轢を一身に受ける殉教者の位置にいるのかもしれませんですぅ。
■ 三浦俊彦 連載小説 『偏態パズル』(第76回) pdf版 ■
■ 三浦俊彦 連載小説 『偏態パズル』(第76回) テキスト版 ■