金井純さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.031 いばらひめ エロール・ル・カイン著』をアップしましたぁ。「いばらひめ」はグリム童話ですから、ル・カインの絵がメインの本です。で、ル・カインの『いばらひめ』の絵は素晴らしい。金井さんは「ル・カインの『いばらひめ』の最も美しい部分として、私たちの目に最初に飛び込んでくるものは、その「地」である。・・・それらの「地」は切り取られたように前面にせり出し、遠近感を狂わせながら、エキゾチックな文様そのものとして絵の全体を一つの謎に還元してゆく。・・・そのとき「地」は、読み解けないテキストそのものである」と書いておられます。申し分ない読解ですねぇ。
ル・カインはイギリス人ですがシンガポール生まれで、アジア人とイギリス人の混血です。幼少時代をインドで過ごしました。ちなみに性別は男性です。そういった生育環境が反映されているせいか、ル・カインの絵にはどことなく東洋的な雰囲気が漂っています。ただそれをエキゾティズムで片付けるのは早計といふか、ル・カインに失礼かもしれません。
金井さんはル・カインの最高傑作は『いばらひめ』だとした上で、その理由を「「いばらひめ」のテキスト、物語構造に、ル・カインのこの絵本の桁外れの美をもたらす構造が内包されているからに他ならない。生誕の祝いに、とりこぼされた妖精の呪いは、姫が紡ぎ車の針に触れると死んでしまう、というものであった。紡ぎ車である理由は、それが「糸を生み出すもの」である以外にはない」からだと批評しておられます。これも申し分ない読解だなぁ。ル・カインは知的な絵描きさんです。じっくりコンテンツをお楽しみください。
■ 金井純 BOOKレビュー 『絵のある本のはなし』『No.031 いばらひめ エロール・ル・カイン著』 ■