岡野隆さんの詩誌時評『No.020 月刊俳句界 2014年10月号』をアップしましたぁ。月刊俳句界さんの「結社の多様化」といふ特集を取り上げておられます。短歌・俳句の世界では結社単位に詩人が集まって活動するのが一般的です。もちろん同人誌も存在しますが、実質的に結社誌と変わらない雑誌が多い。若い詩人たちが集まって切磋琢磨する、あるいは中堅以上の詩人が集まって一定の目的を定めて活動するような同人誌はほぼ皆無でふ。平たく言えば主宰格の詩人が、「詩人同士は基本的に同格だから、ウチは同人誌にする」と決めた場合が大半です。主宰格の詩人が抜ければ雑誌が解体状態になるのは結社誌と変わりませんなぁ。作家がほぼ完全に同格の同人誌で、喧嘩を含めていろいろと楽しい事件が起こるのは、自由詩と小説の世界だけかもしれまへん(爆)。短歌・俳句界の結社誌・同人誌は、たいていは個々に孤立したピラミッド構造であります。
んで岡野さんは主にネット同人誌について論じておられます。「ネットメディアだろうと組織の社会的影響力と、それに付随する現世的メリットが必要になる。それを獲得できなければ紙がデジタル媒体に変わっただけで、現在星の数ほどある少人数の仲良し作家の相互安全保障的避難場所結社誌・同人誌と同様に、泡沫のように現れ消えてゆくだけである。ネットに移行すれば印刷費等の負担は減るが、仲間内の楽しいお遊びに終始するならそもそも紙かデジタルメディアかといった問いを発する必要はない」と書いておられます。その通りですなぁ(爆)。
また岡野さんは、「商業メディアにとって、最も重要なのは経済である。・・・ネット広告などで収益を得られるメドが立てば、商業メディアは迷うことなくネット媒体に移行するだろう。・・・ある日商業メディアが「まだ紙にこだわっているんですか」と言い出す可能性は十分ある。そうなれば小規模な結社誌や同人誌がネット上でやろうとしていたことは吹き飛ぶ。収益システムが変われば、当然、商業メディアの編集方針も大きく変わるはずである。・・・またメディアがネットに移行すれば作家の言説は自ずからデータベース化されるわけで、従来とは異なるスタンスで文学作品や批評が構想されることになろう」とも書いておられます。これもしごくまっとうな見解だと思います。
ネット時代、つまりあらゆる知が情報化される現代では、多くの作家がネット上の情報をうまく利用し始めています。その情報化(データベース化)の波が自分の作品にだけは及ばないと考えるのは甘い。文学を含めてすべての情報はデータ化され、公開される方向に進むはずです。つまり雑誌だろうと単行本だろうと、紙媒体のメディアは従来とは異なる生き残りの方法を探さなければならなくなる。もちろんそこには収益をどう確保するのかといふ問題も含まれます。この出版システムを含めた変化はまだ過渡期の状態にあります。しかし既存権益を死守しながら将来的変化の行く末を考えなければ、出版社は生き残れないでせうねぇ。
■ 岡野隆 詩誌時評 『No.020 月刊俳句界 2014年10月号』 ■