佐藤知恵子さんの文芸誌時評『No.008 No.009 オール讀物 2014年07月号』をアップしましたぁ。井上荒野(あれの)さんの『ジョニーへの伝言』を取り上げておられます。荒野さんは井上光晴さんの娘で直木賞作家です。
『ジョニーへの伝言』は言うまでもなくペドロ&カプリシャスの『ジョニィへの伝言』が下敷きになっています。佐藤さんは「正直に申しますと、タイトルを見た時、アテクシの中の小悪魔ちゃんが、「ああまた通俗小説の愉楽にひたるのねぇ」と囁きましたの。でも小説って最後まで読んでみなければわからないものだわ。・・・久しぶりにハッと目がさめるよう作品を読ませていただきましたことよ」と書いておられます。
その理由を佐藤さんは、「そうね、〝圧〟がかっておりますの。純文学と違って大衆小説は、サラリと読めて、「ああ面白かった」と読者に思わせなければいけません。でも作家様が読者のレベルはこんなものという感じで作品をお書きになると、やっぱりそれは読者に伝わってしまいますのよ。作家様がお持ちの最良の部分を表現しながら、なおかつ大衆小説の様式を踏まえていないと、星の数ほどいる大衆作家の一人にはなれても、たとえばオール様の看板を背負うようなスター作家にはなれませんことよ」と批評しておられます。
不肖・石川、佐藤さんのコンテンツを読んでから、急いで図書館に行って井上さんの『ジョニーへの伝言』を読んでみたのです。佐藤さんの言うとおりだなぁ。『ジョニーへの伝言』、いい作品です。落としどころはペドロ&カプリシャスの『ジョニィへの伝言』と同じですから、プロットとは何か、小説の傑作とは何かを考えさせられますね。
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評 『No.008 No.009 オール讀物 2014年07月号』 ■