松本和也さんの演劇金魚『No.007 シンプルだけれど確かな想像への招待──『驚愕の谷』を観て』をアップしましたぁ。松本さんは評論「『風』と『結び目』──日・中・韓国際共同制作作品『祝/言』」で文学金魚新人賞佳作になった方です。信州大学の先生で、ご専門は日本近代文学ですが現代演劇にもお詳しい。ついこの間、 彩流社から『平田オリザ 〈静かな演劇〉という方法』をお出しになりました。今回は、フェスティバル/トーキョー14で上演された、ピーター・ブルック、マリー=エレーヌ・エティエンヌ作・演出の『驚愕の谷』の劇評を書いていただきました。
ピーター・ブルックはイギリス演劇界の重鎮で、独自の演劇論で知られます。『なにもない空間』冒頭の、「私にできるのは、どこでもいいから空いている場所を選び取り、そこを空(から)の舞台と呼ぶこと。ひとりの男が、この空いている場所を、ほかの誰かが見ているあいだに、歩いて渡る、そして、演劇の活動が従事すべきは、これだけで十分なのだ」という言葉は余りにも有名ですね。マリー=エレーヌ・エティエンヌは長年に渡るピーター・ブルックの創作パートナーです。
松本さんは『驚愕の谷』について、「地明かりに、必要最低限の机や椅子が出し入れされる「なにもない空間」に、3人の俳優が、役を転じながら現出させていくのは、超人的な記憶能力をもったサミー・コスタスの、それゆえの転機‐活躍‐苦悩である。その半生を、新聞社上司や、医者、ショウビジネスの関係者などが取り巻き、そして舞台上の音楽奏者2名(ラファエル・シャンブーヴェ、土取利行)による音色が彩っていく。ストーリーも、表現も、至ってシンプルである」と書いておられます。ピーター・ブルックならではの舞台の様子が伝わって来ますですぅ。
■ 松本和也 演劇金魚 『No.007 シンプルだけれど確かな想像への招待──『驚愕の谷』 ■