山際恭子さんのTVドラマ批評『No.070 さよなら私』をアップしましたぁ。NHKさんで放送されていたドラマ10です。永作博美さん主演で、主人公の親友を石田ゆり子さんが演じておられました。藤木直人さん、佐藤仁美さん、尾美としのりさんも良い演技をされていました。尾美さんがキャスティングされたのは、懐かしの大林宣彦監督の『転校生』への敬意かな(爆)。『さよなら私』では永作さんと石田さんの心が入れ替わるのですが、『転校生』では尾美さんと小林聡美さんの心が入れ替わっておりました。こちゃらは男女の入れ替わりモノでごぢゃりましたが。
山際さんが書いておられるように、従来のドラマの主流は「メインは男女関係で、女性同士の関係はそこから派生する感情のカスのようなもの、要は刺身のツマ」でした。それがアナ雪以降、にわかに女性同士の関係をフォーカスするドラマが増えてまひりました。このあたり、テレビは良くも悪くもフットワークが軽いです。「女-女の関係において、男はその関係を成り立たせる要の位置にはおらず、本当のところ居てもいなくてもいいみたいな刺身のツマそのものなのだ。そういった作品が・・・大ヒット作を経て、文字通りのメジャーな文脈にのるという、これはテレビなどの大衆的な映像文化史を超えて、文学史的にも事件なのではないか」と山際さんは論じておられます。
ただま、不肖・石川も『さよなら私』を何回か見ましたが、それほどの新鮮味はなかったなぁ。山際さんは「女性同士の機微をじっくり描くのかと思いきや、二人のヒロインの身体と心が入れ替わるという「入れ替わり」モノで、・・・これは「あなたは私」という女性同士の親密感をヴィジュアル化すると同時に、男性の作家自身がそれを捉えるために必要な装置なのかもしれない。女ならば実際に入れ替わらなくたって、普段から入れ替わっているのに近い感覚はわかる」と批評しておられます。その通りだなぁ。
山際さんはまた、「ヒロインの一方の肉体が、実は死の病に冒されている、というのも、従来的な文学やドラマの文脈に引きつけた「意味」を探しているように思える」とも批評しておられます。そーなんだよなー。テレビドラマって、たいていツカミはOKなんだけど、オチが弱い。『さよなら私』もあーそうねといったヒューマンな結末でした。ま、テレビ・映画に限らず、最近では小説でもツカミ重視の傾向は見られます。しかし特にテレビドラマの場合、オチは気にせずその過程を楽しんでくださいませぇ~といふ傾向が強いやうですぅ。
■ 山際恭子 TVドラマ批評『No.070 さよなら私』 ■