ラモーナ・ツァラヌさんの『青い目で観る日本伝統芸能』『No.016 和泉流狂言の現在形―『万作を観る会』』をアップしましたぁ。11月19日と22日に国立能楽堂で開催された『万作を観る会』を取り上げておられます。二世・野村万作氏は言うまでもなく和泉流の能楽師で人間国宝です。息子さんはテレビ・映画・舞台でも活躍されている二世・野村萬斎氏です。萬斎氏出演の映画『陰陽師』や『のぼうの城』は大ヒットしました。ラモーナさんがご覧になったのは22日の舞台で、『三番叟』で幕が開きました。
『〈三番叟〉は普段はお正月の能公演で演じられる儀式的な〈翁〉の一部であり、祝言であると同時に格が高い演目である。・・・通常は「三番叟」と「千歳」を演じる狂言師二人が登場するのだが、今回は「双之舞」という特殊な演出が行われ、野村万作氏と野村萬斎氏がともに三番叟の役をつとめた。面箱持ちの役は萬斎氏の息子、野村裕基に任された。野村家の三代が同時に舞台に立ったわけで、それが特別である〈三番叟〉をさらに特別なものにしていた』とラモーナさんは書いておられます。
すべての舞台は一度限りのものですが、それにしても貴重な公演をご覧になりましたねぇ。ラモーナさんは、『囃子方の掛け声とともに、三番叟の役をつとめる狂言方の舞いは次第に速くなる。今回、二人がエネルギー溢れる舞いを披露する三番叟は迫力満点だった。二人の動きは一つになり、また別々に分かれてゆく。二人で一つになったかのような演者たちの身体は、絶妙な効果を生み出していた。万作氏と萬斎氏が一緒に舞った〈三番叟〉は、長年にわたって磨かれた芸の洗練を見せていた』とも書いておられます。う~ん、映像でもいいので不肖・石川も見てみたひと思います。
『三番叟』に続く狂言では『痺』が秀逸だったようです。ラモーナさんは、『太郎冠者が自分自身のシビリに声をかける場面がある。・・・主の命令に従えばご褒美があるという期待(自己暗示)でシビリは一瞬直るのだが、行き先が和泉の境だと分かると太郎冠者のシビリはまた痛くなる。どうしても憎めない太郎冠者の徒(いたずら)っぽさには、人間の子ども時代を連想させる無邪気さがある。それこそが狂言における笑いの特殊な味わいであり、この芸の最大の魅力だといえる』と批評しておられます。能と狂言は本来一体ですが、どちらにも天上に届くような高貴さと地上の混沌と滑稽が含まれているやうです。
■ ラモーナ・ツァラヌ 『青い目で観る日本伝統芸能』『No.016 和泉流狂言の現在形―『万作を観る会』』 ■