田山了一さんのTVバラエティ批評『No.047 ごぶごぶ』をアップしましたぁ。MBS(毎日放送)で放送されている深夜番組で、ダウンタウンの浜田雅功さんとロンドンブーツ2号の田村淳さんが出演されています。2人が関西の街を散策するバラエティロケ番組です。東京では放送されていませんが、不肖・石川も毎週楽しみにして見ている番組です。低予算ですが田山さんが書いておられるやうに、この番組のクオリティは高いと思います。タレントさんの力をはっきり感じ取れる番組です。
田山さんは、『淳さんの芸風は〝本音暴露芸〟である。この芸風は従来のお笑い界にはない斬新なものだった。当初は浮気調査など素人相手の本音暴露を行っていたが、じょじょにより面白いリアクションを引き出せるタレントを素材にする本音暴露番組にシフトするようになった。・・・タレントは・・・パブリックイメージをまとってテレビに登場しているわけだが、淳さんはそれを徹底的に壊してゆく。・・・タレントも従来のパブリックイメージから脱却したいと望んでいるのであり、それを淳さんが手助けしている面もある。その意味で『ロンドンハーツ』は一種のタレント再生工場でもある』と書いておられます。面白い分析だなぁ。不肖・石川もその通りだと思います。
田山さんはまた、『大阪力、東北力といった地方ならではの文化的風土は確実にあると思う。それを活かして全国区にするためには、実質的に文化・経済の中心となっている東京の文化風土を的確に理解する必要がある。東京は建前文化であり、なにをするにしても手続きが求められる。・・・どう建前を壊してゆくのかが東京文化へのカウンターカルチャーなのであり・・・ほとんど徒手空拳でテレビの前に立つ全国区の大阪系のお笑いタレントの番組は・・・ルールを守りながら既成の秩序や規制を壊す方法を教えてくれる』と批評しておられます。
お笑いの世界はなんやかんやいってリベラルだと思います。若手でもちょっと面白いといふことになれば、数回はテレビに出るチャンスが与えられる。それをきっかけにしてメジャーになってゆくタレントさんもいらっしゃる。文学のジャンルなどでは考えられないようなシステムですね。それだけ新しいスターを求める土壌があるのであり、それを的確に判断できるシステムが揃っているといふことだと思います。
また〝ルールを守りながら既成の秩序や規制を壊す〟といふのは、まあいわば金魚屋が目指すところでもあります(爆)。不肖・石川、長いこと文学業界にいて編集などをやっていますが、業界に新しい才能を見抜き育てる力がなくなっていることをひしひしと感じます。みんな顔を見合わせて、他のメディアで使っている新鮮みのない作家を順繰りに起用しているような感じです。流行作家取り合いの大衆小説業界ならまだわかるのですが、純文学業界や詩の世界でもそうなのです。これでは業界がますます沈滞してゆくでしょうね。必要なのは勇気です。それは作家の側にもそれを売り出す側にも必須なのではないかと思います。
■ 田山了一 TVバラエティ批評『No.047 ごぶごぶ』 ■