山際恭子さんのTVドラマ批評『No.062 今日は会社休みます。』をアップしましたぁ。綾瀬はるかさん主演で、福士蒼汰、玉木宏、仲里依紗、田口淳之介さんらが出演されています。原作は藤村真理さんのマンガです。山際さんのレジュメですと、『優しい両親の一人娘としてぬくぬく暮らし、都会生活の快適をも享受し、人間関係で傷つくことを避けながら、あるときイケメン大学生(福士蒼汰)の彼氏ができ、同時に同じビルの会社のCEO(玉木宏)から言い寄られる』という内容のドラマです。
ま、そんな話は現実にはなかなかないわけで、山際さんは『声を大にして誤解を・・・正したいのは、福士蒼汰のような大学生はいない、ということだ。・・・30女が少女のようである、というのは紛れもなく現代の図だろう。ならば現代の21歳の男の子は、それ以上に幼い。大人びて遊び慣れて、なおかつ都合のいいところだけ純情だったりするなら、そこには特異な事情があるはずで、本来ならばそれが「ドラマ」になるはずなのだが』と批評しておられます。生身の人間が演じるドラマでは、本来ならさういふ展開が必要でせうね(爆)。
日本のマンガのレベルの高さは世界的に認知されています。それを反映してマンガ原作のドラマや映画がだいぶ前から増えています。マンガは元々絵に言葉が付いた芸術ですからヴィジュアル化しやすいわけです。こりはフェアリー・テールだなぁといふ場合でも、美男・美女俳優をキャスティングすれば説得力は増します。リアルな内容ならなお映像化しやすいですね。どこが物語のポイントなのか、原作の中で絵と言葉で示されているわけですから。
もちろん小説がドラマ・映画の原作になる場合もあります。しかしその場合でも、作家がある程度ヴィジュアル化を考えている作品が原作として取り上げられるケースが増えているやうに感じます。現代社会では以前にも増してヴィジュアルで情報を受け取ることが多いわけですから、文字で書く小説であっても、それを無視することができなくなってゆくのではなひでせうか。
言語同断に文字主義的な作品があってもいいですが、いわゆる売れる小説はヴィジュアル化要素をたくさん持った作品になってゆくでせうね。キャロルの『不思議の国のアリス』の冒頭で、アリスちゃんがお姉ちゃんが読んでいる本を盗み見して、「まあ、文字ばっかり。あんな本、よく読む気になれるわね」と独白するシーンがあります。アリスちゃんに全面的に賛成!といふわけではありませんが、挿絵とは異なるビジュアル化への試みを、出版界でもそろそろ真剣に考えた方がいい時期かもしれません。
■ 山際恭子 TVドラマ批評『No.062 今日は会社休みます。』 ■