岡野隆さんの『BOOKレビュー・詩書』『No.009 この新たな才能をどう評価すべきか-鴇田智哉句集『凧と円柱』』をアップしましたぁ。鴇田智哉(ときたともや)さんの第二句集『凧と円柱』を取り上げておられます。
岡野さんは冒頭で『この句集は優れている。僕は『凧と円柱』を絶賛しているのである』と書いておられます。ほんで末尾で『必ずしも誉めるだけの内容ではなくなってしまった。しかし本当に優れた作家なら、手放しの賛辞は百年先に受け取れば良い。ただ鴇田氏が若手俳人の中で、最も優れた才能を持つ作家の一人であるのは確かだと思う』と書いておられます。ま~そうですよね。すんごいぇぇでっせでは批評になりませんもの(爆)。
岡野さんの批評のポイントは、『鴇田氏の作品からは、彼の実存に根ざした固有のオブセッションのようなものが感じ取れる・・・あえて言ってしまうと、それは〝空虚へのオブセッション〟ということになる。・・・問題はそれが彼固有の主題なのか、俳句文学にとって汎用性(通有性)があるものなのかということである』、にあるのではなひかと思います。
実存的な傷を抱える作家は、それを核に作品を生成することができます。この場合、特異で完成度の高い作品が生まれる可能性が高い。また加藤郁乎さんのように鋭い勘で新しさを捉えても、その理由を理解できなければ一過性の新し味で終わってしまふ。岡野さんは鴇田さんの作品を高く評価しながら、それが鴇田さんあるいは俳句文学にとって、未来への展望が拓ける表現なのかと考察しておられるやうです。
いちじくを食べた子供の匂ひとか
さざめきのさなかに針を仕舞ふ春
人うせてすきまの残る夏の昼
箱庭を見てゐるやうな気になりぬ
かなかなをひらけばひらくほど窓が
岡野さんが引用した鴇田さんの作品から5句セレクトしました。独特の世界観と表現をお持ちであることがよくわかると思います。短歌・俳句・自由詩の詩の世界はおしなべて不作ですが、優れた詩人が一人でも多く同時代に存在するのは良いことであります。
■ 岡野隆 『BOOKレビュー・詩書』 『No.009 この新たな才能をどう評価すべきか-鴇田智哉句集『凧と円柱』』 ■