ラモーナ・ツァラヌさんの連載エセー『交差する物語』『No.005 森の向こうの国』をアップしましたぁ。ラモーナさんはやっぱりドラキュラの末裔だったのですな(嘘)。『小学生の頃、テレビでアメリカのアニメを見ていた時・・・「ドラキュラ伯爵」は、「トランシルヴェイニア」という所に住んでいるのだと耳に入った。・・英語能力を少し身につけた頃から、ちょっと待ってくださいよ、今のはうちのトランシルヴァニアの話しか?と考え始めた。世界の端っこにあるルーマニアの地方がアメリカのアニメや映画で取り上げられるなんて、ありえない話だと思った』と書いておられます。
ドラキュラゆかりの城といわれるブラン城は実在しますが、ブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』のモデルになったヴラド・ツェペシュ国王は住んだことがなく、国境防御用の城砦だったようです。ラモーナさんが掲載しておられる写真を見ても、かなり山深い場所にあって自然の地形を利用したお城です。ただトランシルヴァニアはラテン語の”ultra silvam”で、「森の向こうの国」という意味だそうです。今回のコンテンツのタイトルは〝森の向こうの国〟ですが、ここが一番ラモーナさんらしいポイントかもしれません。
こりはなんとなくの不肖・石川の感覚なのですが、ラモーナさんの演劇評やエセーには〝森の中〟、あるいは〝森の向こう〟といった雰囲気があるやうに思います。グリム兄弟が蒐集した童話もそうですが、ヨーロッパには森を感じさせる作品が沢山あります。森に対する独特の理解や感性がなければそういった作品は成立しないでせうね。ラモーナさんもそういった作家の一人かもしれません。『すべては海で起こる』といふ物語の出だしはピンと来ませんが、『すべては森の中で起こる』と書くと、なんとなくそうかぁといふ気がします(笑)。お能もまた森を感じさせる芸術かもしれません。
■ ラモーナ・ツァラヌ 連載エセー 『交差する物語』『No.005 森の向こうの国』 ■