Interview of gold fishes 第12回『山田太一 戦後を貫く脚本家の視線(後編)』をアップしましたぁ。日本を代表する脚本家、山田太一さんのインタビュー後編です。山田脚本は、基本的には等身大の普通の人間を描いているのにも関わらず独特です。ストイックな人間が登場することが多いのですが、禁欲的なだけではありません。山田脚本に登場する、過度に楽天的にも悲観的にもならない人間の姿は、山田さんの人間の可能性を巡る独自の思考から生まれているやうです。
山田さんは、『人間にとって、限界はリアルに存在するものだと思います。・・・ただ自分の限界を知るということは、僕はなにも人間の可能性を狭める、成長を止めてしまうことではないと思うんだな。・・・諦めるというのは、自分の本当が〝明らかになる〟ということでもあるでしょう。可能性は無限にあるかもしれないけど、どこかでそれを絞らなければならない・・・ポジティブな面だけ見るんじゃなくて、ネガティブな要素も引き受けなければならないわけです』と語っておられます。
現代は老若男女を問わず、〝限界を認めない〟時代になっていると思います。茫漠とした夢を抱えていつまでも足掻いている人間が増えています。しかし山田さんがおっしゃるように限界は厳然としてある。また限界を認めて『ネガティブな要素』を引き受けるのは、確かに新たな可能性になります。多くの創作者が、たくさんあったはずの可能性を切り捨てる形で才能を開花させています。また創作者の才能の多くは弱点と紙一重である場合が多い。作家の長所を支えているのは、実に危ういマイナス要素である場合がほどんどなのです。
山田さんはまた、脚本と演技の関係についても語っておられます。『僕はアドリブは基本的にやらないでくれって演出家や俳優さんに頼みます。・・・もちろんここにこういう台詞があればいいのにないってことは、絶対あります。・・・だけど僕としては、それは台詞ではない形で表現してほしい。台詞にない部分はむしろ芝居のチャンスなんです。演出家のチャンスでもある。だから少し苦しくても、僕が書いた台詞以外は言わないで、なにか思うことがあったら別の形で表現してほしい。そのくらいのことを思っていなければ、オリジナルのシナリオなんて書けません』とおっしゃっています。ここまではっきりした思想を持った脚本家と仕事をするのは、俳優さんの方も楽でしょうね。
それにしても山田さんは確信的な〝反戦派〟だなぁ。でもそれが決して杓子定規な主義主張にならないところが山田作品の魅力だと思います。戦争や原発など、日本人のマジョリティが反対の問題に、ことさらに声を上げる文化人を不肖・石川はあんまり信用してないです(爆)。山田作品のように、グッと身につまされるリアリティある問題の捉え方の方が、遠回りかもしれませんが、その受容者の心に響く作品になると思うのでありますぅ。
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