山本俊則さんの美術展時評『No.036 竹内栖鳳展-近代日本画の巨人』をアップしましたぁ。少し前に東京国立近代美術館で開催され、その後、京都市美術館に巡回した展覧会です。意外ですが、これが竹内栖鳳初の国立美術館での展覧会であり、過去最大規模の回顧展であったやうです。山本さんも書いておられるように、『東の(横山)大観、西の栖鳳』と称される大画家ですが、代表作を一同に集める展覧会は開催されて来なかったやうです。現在では大観の評価が栖鳳を大きく上回っていますが、大規模な展覧会があまり行われてこなかったこともその一因でしょうね。
山本さんは栖鳳について、『画家として見た場合、大観よりも栖鳳の方が遙かにバリエーションに富んだ作家である。栖鳳は前衛・伝統両面で日本画の可能性を探究した画家だった』と書いておられますが、その通りだと思います。大観はどっしりと構え、堂々とした日本画を描き続けました。彼の代表作と呼ばれる作品が富士山を描いたものであることも、大観作品の特徴をよく表していると思います。栖鳳作品には大観のような安心・安定感はないのですが、画題・画法ともに多彩です。金銭的評価は別として、後の世代に与えた影響は栖鳳と大観では拮抗していると思います。もしかすると栖鳳の方がより多くの可能性を示唆した画家かもしれません。
また大観の代表作は識者によって別れますが、栖鳳の場合は『斑猫』でほぼ一致します。山本さんは、『栖鳳の『斑猫』を傑作にしているのは彼の精神である。『斑猫』が発散している神性は、栖鳳の精神が古代から脈々と続く絵画の真髄を捉えていたことを示唆しているだろう。またその精神(真髄)は、栖鳳のほかの画にも通底しているのである』と批評しておられます。確かに尋常な絵ぢゃないですね。神猫であります。
『斑猫』は東京の山種美術館所蔵で、かなり頻繁に展示されています。不肖・石川も見たことがありますが、物理的な絵の大きさよりも遙かに大きな感じのする絵です。それに素晴らしい毛並みなんだなぁ。もちろんガラス越しにしか見ることはできないんですが、もし『斑猫』を入手することができたら、絶対一度は絵に触れて猫の毛を撫でてやるだらうと思いますですぅ(爆)。
■ 山本俊則 美術展時評『No.036 竹内栖鳳展-近代日本画の巨人』 ■