まぁぁぁぁぁっ! 幼少のみぎりからご本を読み続けたアテクシに、よりにもよって『オール讀物』の時評をせよとの白羽の矢が立ちましたことよっ! 金魚屋様はお目が高いと申しますか、勇気がおありになると申し上げた方がよろしいのか、迷うところですわ。
でもアテクシ、心底『オール讀物』という雑誌が好きでござ~ますの。もちろん総評で齋藤様がお書きになっておられますように、『オール』は読み切り短編がおおございますから、そりゃぁ当たり外れがありますことよ。でも『オール』ならではの、ビシッと決まった作品に出会える月がたまらなく快感ですの。そういう作品が、年に数回はありますのよ。
さっそくですが、ご紹介者の谷輪洋一様のご指示で、昨年(2011年)の12月号から時評を始めさせていただきますわ。アテクシ、買った本や雑誌は一冊も捨てませんから、押し入れの中から雑誌を探しだしたのですが、『時代小説収穫祭』の特集号だったのですね。すっかり忘れておりましたわ。ということは・・・。
・・・ハズレ・・・であります。ああっ、小文字でも大文字でも同じですわねっ。ハズレなのよああた、あんまり面白い作品がなかったのでござ~ますわ。
そりゃあ『オール』に掲載される作品は、質がたこうございますわ。この号でも北原亞以子様、宮部みゆき様、葉室麟様などの超売れっ子作家様が作品を書いておられますわ。でも少し読み返して思い出しましたの。面白かったけど、迫るものがなかったわね~って。
『オール』はいわゆる大衆小説雑誌ですから、言葉は悪いかもしれませんが、口からでまかせの物語がおおございますの。それがわるいってことは、『オール』の場合、ぜんっぜんっありませんの。むしろうまくだまされて引き込まれたいのよ。問題はその引き込まれ方の質ですわね。
大衆小説ではストーリー展開が面白くなければなりませんわ。時代小説だとそれが、現代を舞台にしたら書けない怪異話とか、およそありえない純愛などに流れがちですの。楽しいのですが、読んだらすぐに忘れてしまいますわ。江戸時代という設定が、細部まで話を詰めないでいい便利な場所になってしまっておりますの。
たとえば宮部みゆき様の百物語、これを現代を舞台にすれば、300枚くらいの長編になると思いますわ。河童とか狐の嫁入りが身近だった(らしい)江戸時代が舞台だから、こんなものよねって感じで短編にまとめられるのよねん。
それと今回は資料の未消化が目立ちましたわね。「元禄××年江戸城本丸××の間にて」とか資料に沿って作品を書けば、そりゃぁ時代の雰囲気は出ますが、登場人物の心が現代とは変わらないものがおおございました。もっと資料を読み込めば、その時代特有の心理描写が生まれてくるはずですが、『オール』に掲載される作品には、その途中経過のような短編も多いのよねぇ。売れっ子作家様たちは、書きながらお考えになっておられますの。今後の作品に期待だわ。
一番面白かったのは、グラビアの南伸坊様の『今月の本人2011』。伸坊様お得意の顔面模写よ。伸坊様がマツコ・デラックス様に、あんなに似てるなんて初めて気がつきましたわ。ああっ、島田紳助様の顔面模写もそっくりでございました。
『オール』でなにが面白いかと申しますと、読者を楽しませたいという作家様のお気持ちが、執念というか、怨念に近い形に高められた時ですの。案外、物語展開は奇想天外なものでなくてもかまいませんの。むしろ物語の細部にぐいぐいはいりこんでいくほうがよろしゅうござ~ますの。ああ、これはいい作品だなぁって感じるのは、たいていの場合、そんな作品の1行か2行なのよねぇ。
次回は新年号でございます。きっとアテクシの大好きな作家様が登場なさることよ(もう読んでしまってますけどね)。楽しみだわっ!。
佐藤知恵子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■