長岡しおりさんの文芸誌時評 『 No.008 小説すばる 2013 年 09 月号』 をアップしましたぁ。昨日は 『すばる』 さんでしたが、今日は 『小説すばる』 さんの時評です。集英社さんは純文学系雑誌として 『すばる』 を、大衆文学系雑誌として 『小説すばる』 を刊行しておられます。文藝春秋社さんの 『文學界』 と 『オール讀物』 と同じような構造です。最近では 『すばる』 新人賞受賞の田中慎也さんが 『共喰い』 で芥川賞を受賞しておられます。業界的感覚では田中さんの 『すばる』 新人賞はちょっと意外で、『蛇にピアス』 の金原ひとみさんの受賞の方が 『すばる』 さんらしひ。
そんで今回の『小説すばる』 さんの特集は 『おそとで、読書。』 であります。大変僭越ですが、不肖・石川、この企画、よく編集会議で通ったなぁと思ひました (爆)。『小説すばる』 さんには浅田次郎さんの新作が掲載されていますから、それで9月号は充分なわけです。わざわざ文芸誌を買う読者の多くは、お目当ての作家の新作をいち早く読みたいのです。でもなんらかの形でその月固有の特集を組まないと、月刊誌は格好が付かないわけでして。
小説文芸誌の特集企画は、ぶっちゃけけっこういい加減です。編集長以下、何人もの作家を抱える編集者は小説原稿を精読し、それを商品化するための編集指示に忙しい。特集はその片手間に作られるのですが、これはこれで大事な目的があります。最近書いてもらっていない作家や批評家さんを起用することで、パイプを保持するわけです。いきなり新人を起用することはあまりないな。でもハッとするようなエセーを書いた作家さんを重用し始めるといふこともあります。いわば文芸誌による小テストといったところでしょうか (爆)。
いい悪いの問題ではなく、どんなメディアにも作家に期待するルールがあります。自分のことばかり考えるのではなく、相手方のニーズに敏感に反応できる作家がメディアで活躍しやすいのも確かです。石川はメディア迎合型作家が素晴らしいとは思いませんが、ニーズを知っていて独自路線を取る作家と、メディアや読者などの他者をまったく理解しようとせずに、ただ我を張る作家では自ずから作品の質が異なってくるのも確かだと思います。
■ 長岡しおり 文芸誌時評 『 No.009 小説すばる 2013 年 08 月号』 ■