長岡しおりさんの文芸誌時評 『No.003 ハヤカワ・ミステリマガジン 2013年07月号』 をアップしましたぁ。『このミステリーがすごい!2012年版』、『週刊文春ミステリーベスト10 2011』、『ミステリが読みたい!2012年版』 の海外部門一位を獲得して三冠王に輝いたデイヴィッド・ゴードンさん原作の 『二流小説家』 を取り上げておられます。上川隆也さん主演で同名映画も現在上映中です。
『ミステリマガジン』 さんの特集タイトルは 〝翻案の魅力〟 です。不肖・石川はまだ 『二流小説家』 を読んでいないのですが、この小説、とぉっても映像化しにくい作品らしひです。ただ長岡さんが書いておられるように 『困難 × 困難 = 困難の 2乗 とはかぎらない。困難が相殺し合って、なんか別のものになる、ということはある』 わけです。ハリウッドより先に日本で映画化されたのも、一種の 〝翻案〟 のフィルターを通ったからだといふのが特集の意図のようです。
確かに翻案や、時には幸福な文化的な誤解が新しい文化を生み出すことはありますねぇ。日本でも上田秋成 『雨月物語』、尾崎紅葉 『金色夜叉』 など、海外原本を翻案して、似ても似つかぬような作品になったケースはけっこうあります。文化というのは刺激がないと固着しやすいもののようです。正確な理解が新しい文化を生み出すのかといえば、そうでもないところが面白いですね。
ですから芸術の世界ではアヴァンギャルドは簡単に否定してはいけないわけです。なが~い目で見守らなければなりません。時間が経てば、単なる思いつきだったのか、勝算があったのか、あるいはその作家の肉体的思想に根ざした表現だったのかが自ずから明らかになるものです。
■ 長岡しおり 文芸誌時評 『No.003 ハヤカワ・ミステリマガジン 2013年07月号』 ■