星隆弘さんの文芸詩時評 『No.002 en-taxi (エンタクシー) 第35巻 2012年春号』 をアップしましたぁ。写真家ホンマ・タカシさんの連載 『きわめてよいふうけい』 を中心に、一回性ということを考察しておられます。写真の一回性が東日本大震災が起こった三月十一日に重なります。そのかけがえのない、また取り返しもつかない一瞬をつなぎ止めるような形で、今号の 『en-taxi』 は編集されているようです。
文学を含めた芸術の現在は、かつてそこにあった何ものかへの葬送曲といった雰囲気を漂わせています。星さんが論じておられるように、メディアを含め、多くの人が取り返しのつかない一度限りの出来事に視線を注ぐようになっています。起こってしまったこと、終わったものにばかり目がいくのです。未来を切り拓く試みよりも、過去の事件、過去の作家の仕事の検証が増えています。
それは未来のヴィジョンが見えないからにほかなりません。しかし未来が過去の延長上にあるのも確かです。過去の再検証が無駄だとは思いません。むしろそのような指向が生まれた以上、徹底してその試みを為さなければならないと思います。過去を動かしがたい指標や権威として捉えるのは無意味です。過去検証は、あくまで未来のために為されなければなりません。
PS.
日本の女子レスリング、つおいですねぇ。もちろん選手が努力しているからですが、突出した力を持つ選手が現れると、それにつられて全体のレベルが上がることもあると思います。芸術の世界でも実はそうなんです。一人優秀な作家が現れると、その周囲から多くの芸術家が生まれます。生来の才能で全てが決まるわけではなく、人間の能力の差は紙一重だということだと思いますぅ。
■『No.002 en-taxi (エンタクシー) 第35巻 2012年春号』 URL■