谷輪洋一さんの文芸誌時評 『No.005 新潮 2012年08月号』 をアップしましたぁ。小沢書店の元社主、長谷川郁夫さんの連載エセー 『吉田健一』 を取り上げておられます。長谷川さんはしばらく前から文筆家として活動されていて、『新潮』 だけでなく 『三田文學』 などにも書いておられたように記憶しています。
谷輪さんがちょっとだけ触れていますが、大手出版社の編集者は普通のサラリーマンに比べて高給取りですから、かつては編集者になるイコール創作活動はしない、という不文律がありました。中小出版の編集者もそれを暗黙の了解として受け入れ、少なくとも編集者を退職するまでは、おおっぴらに創作活動を行わないようにしていた時期があります。
しかしそれはもう過去の話です。今では退職した編集者だけでなく、現役編集者も執筆活動を行うようになっています。出版社も身内の編集者が作家として出版界で話題作りをしてくれて、少しでも本や雑誌が売れるなら、それを認める方向になっているように思います。
それがいいことか悪いことなのかはわかりません。ただそういった状況の変化は文学界の変化と連動しています。従って谷輪さんのような批判があってもいいと僕は思います。僕自身編集者ですが、元編集者であろうと現役編集者であろうと、もし作家として活動するのなら、様々な批判を受けることがあるのは当然だと思います。
また編集者は影の権力者です。出版社員として著者の生殺与奪の権を握ったまま、自分だけは影の権力者の力を淫靡に行使して作家として活動するようなことはあってはなりません。作家が編集者の力を恐れて沈黙するのも健全な状態ではない。文学金魚にはそういった事柄を避けて批判しないようなタブーはありませんが。