ケニー敏江 連載小説『四角い海』(三)をアップしましたぁ。主人公が書き続けている小説の中の主人公・遥香は、父親の遺言でほとんど宿敵とも言える大嫌いな航太と結婚して暮らし始めます。所帯は完全独立型の部屋2つのマンションで、ほとんど顔を合わせることもありません。でもどうしたって航太の気配は感じる。それが強烈な異臭として表現されているわけですから、航太は遙香にとって〝生理的にムリ〟な男です(笑)。
世の中には男と女しかおらず小説は基本的に現世の矛盾を描く言語芸術ですから、男と女は多かれ少なかれ対立します。男は男の世界に属しながら女と接触し、女は女の世界に属しながら男と接触する。たいていの小説の主人公が性別によって男世界か女世界に属しています。遙香が属しているのは言うまでもなく女世界です。父親は理不尽な遺言を遺して亡くなり家族は祖母と母だけ。会社で接触する仲のいい社員も女性です。
この主人公が属する女世界の調和を乱し、苦しみを与えるのは男です。時には男がほんの少しだけ女に幸福を与えたりしますが、それが長続きすることはありません。純文学小説ではまずそういうことは起こらない。『四角い海』では航太(男)は遙香(女)にとっての完全なる異和として描かれています。なぜここまでの拒絶が男に対して表れるのか。完全拒絶は微かであれ交流の道を閉ざします。『四角い海』に閉じこめられるわけですが、これはどうしたって崩壊しなければならない壁でしょうね。
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