松原和音 連載小説『学生だった』第12回をアップしましたぁ。大詰めの卒業編です。この小説はタイトル通り、学生だったという雰囲気がよく出ています。
「はじめてだね。こんなに長い時間、二人で一緒に過ごすの」
「そうだね」
女子大の生徒は、お互いによそよそしい。私もゆかも、約束して出かけたことがない。授業の帰りに買い物に行く程度だった。違う家から来た同士が、一時的に集まる場所。それが学校だった。ゆかが口を開いた。
「さやねえの爪、かわいい。自分でやったの? 見せて」
「これ、実は簡単なの。シール貼って、トップコート塗っただけだよ」
「爪の形、きれいだね」
「ゆかの髪も、すごいさらさら」
「そう見える? 枝毛が多すぎて困ってるんだけど」
水のように流れて、右から左に消えていく会話。
「なんかこの店、落ち着くね」
「だよね」
松原和音『学生だった』
絶対ではありませんが、男の子の世界は序列主義。序列が決まっていないとモメる。序列がひっくり返る時にはさらに大モメします。ある意味社会の縮図。弱肉強食とも言えます。それに対して女の子の世界は横並び。仲がいいわけではない。しかし仲が悪いわけではさらにない。横並びに進み一人ずつスッと外れてゆく。しかし外れ方に大きな差があるとハミ子になる。気づくとまた寄り集まって淡い交わりを繰り返す。この女の子世界、いろんなタイプの小説に援用できるでしょうね。
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