池田浩さんの『大学文芸誌時評』高田朔美「わんにゃっこ」(三田文學 2022年夏季号)をアップしましたぁ。高田さんは第26回三田文學新人賞佳作を受賞しておられます。短編ですがよくまとまった小説です。
池田さんは「小説はかなり固い表現形式なので突飛な展開はなかなか難しい」と書いておられますが、まあその通りです。自由詩のように文脈がポンポン飛ぶような小説を書くのは難しい。前衛小説ではそういったタイプの作品もなきにしもあらずですが、そうなるとなぜ小説なのかという疑問符が湧き出ることになる。
つまり従来的小説文法を破っていたとして、それが小説文学に寄与しているのかどうかが問われることになります。前衛小説は安部公房の『砂の女』などが有名ですが、あの小説、設定が突飛な分、小説は極めてオーソドックスな文法で書かれています。文法自体を破るというか変えた小説はジョイス『フィネガン』がすぐに思いつきますが、あれって2回やる必要あるかぁ? という小説ですね(笑)。
小説をまずテクニック面から考えるのはとても重要です。作家を目ざすなら小説を読んで「ああなるほど」と思うだけでは不十分です。極端なことを言えば何ページ目で事件が起こっていて(心理的事件、現実社会的事件でもいいですが)、小説のどの部分で大団円となっていて、それがどういう種類のまとめ方なのかを真剣に読み解く必要があります。小説に限りませんがテクニック十分で商品流通させることができる作品を書けることがプロの第一歩です。
■ 池田浩『大学文芸誌時評』松井十四季『1000年後の大和人』(三田文學 2021年春季号) ■
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