角川短歌では塚本邦雄さんの特集が組まれていて石川もチラチラ読みましたが、いい特集でした。戦後前衛はホントに消滅しかかっています。言いにくいですが、自由詩の世界の現代詩の、戦後前衛詩人たちを思い浮かべればリアリティをもって感受できると思います。これも書きにくいですが、岡野さんに倣ってストレートに書いてしまいますと、多くの現代詩の前衛詩人が生きたまま死につつあります。それに比べると歌壇では戦後前衛が生きています。
寄港地のくらい夜明けに火夫たちがひらくくらげの解剖圖など
遠い盬湖の水のにほひを吸ひよせて裏側のしめりゐる銅板畫
亡命の旅にしたがふ妃らがえりに縫ひこみわすれし耳環
聖ピリポ慈善病院晩餐のちりめんざこが砂のごとき眼
五月來る硝子のかなた森閑と嬰児みなころされたるみどり
高嶋さんが、戦後思想短歌よりもこういった歌の方が現代では重要になると挙げた塚本邦雄の短歌です。確かにこれらの歌には新たな表現のヒントがある。塚本さん、偉大です。
■ 高嶋秋穂 詩誌時評『歌誌』『角川短歌』「No.073 吉川宏志「出で栄えと〈場〉」」(2020年03月号) ■
■ 高嶋秋穂 詩誌時評『歌誌』『角川短歌』「No.074 特集「生誕100年 塚本邦雄の描写力」」(2020年04月号) ■
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