鶴山裕司さんの連載小説『横領』(No.04)をアップしましたぁ。金魚屋から『日本近代文学の言語像Ⅱ 夏目漱石論-現代文学の創出』を好評発売中の鶴山さんの連載小説です。石川は毎月数種類の小説文芸誌を斜め読みしていますが、ときどき俳人、歌人、自由詩の詩人さんの小説が載ります。で、ん~言いにくいのですが、ほぼ全て小説としては失格です。小説の骨を捉え切れていない。ええかっこしいの小説で終わっています。
石川は前に小説は恥ずかしいことを書くものだと言いました。こんなこと書いたら恥ずかしいなぁということを書くのが小説です。でもそれはまだ正確ではなくて、恥ずかしいを通り越さなければ小説にならない。恥ずかしいことを書いていて、それにまったく無関心になるくらいで初めてインパクトのある小説が書けるのです。詩人さんは小説の核がまずなによりも〝俗〟にあることを捉えられない。岡本かの子なども、それを理解するまでだいぶ時間がかかりましたね。
鶴山さんの小説は石川の判断では合格です。ただ詩人らしい前衛指向も発揮されていて、『横領』の主人公は男になっていますが、語り手は女の方だという設定です。女がすべてを理解した男について書いているという構造です。これが通俗小説を少しだけ天上に引っ張る力になると思います。
詩人という人種は創作において天上を目指す指向を持っています。しかし小説は俗世のものですから見よう見まねで小説を書くと下手な観念小説になりやすい。俗世にとことんまみれて天上への指向が表れないと小説にならないわけです。鶴山さんは詩と詩論はもちろん、小説批評、俳句・短歌批評、美術批評もお書きになります。この作家の全貌はまだ見えにくいでしょうがいずれ明らかになります。またその思考方法と実践は、詩人、批評家、小説家でジャンルを超えたいとお考えになっている作家にも参考になると思います。
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