連載翻訳小説 e.e. カミングス著/星隆弘訳『伽藍』(第34回)をアップしましたぁ。『第五章 大部屋の面々』です。カミングスさんはフランス語が得意でしたから『伽藍』にはフランス語が頻出します。それにダジャレとか地口も好きだったので翻訳は大変です。星さん、お疲れ様です。
今回は大部屋の中での男女関係の話ですね。まー世の中どこに行っても男と女の話はついてまわりますから、収容所の中でも逢い引きに成功した連中がいる。カミングスさんはそんなことしませんが、大はしゃぎですな。フランスですから、ちょー厳しい処置にはならなかったようですが。
第一次世界大戦前まで、アメリカは不干渉主義(モンロー主義)で他国の紛争には介入しませんでした。大戦争になった一次大戦はヨーロッパの力では戦争を終結できなかったので、アメリカを無理矢理引きずり込んで終戦に持ち込んだところがあります。それまでアメリカは巨大な資本主義島国として繁栄を謳歌していたのですな。でも物質的には恵まれていても、文化はヨーロッパに大きく立ち後れているという根深いコンプレックスがあった。カミングスはもちろん、パウンドやエリオット、ヘミングウェイ、フィッツジェラルドらがヨーロッパに渡った理由です。
しかし現実のヨーロッパは、当たり前ですがひっくり返るほど進んだ文化国家ではなかった。少なくとも野蛮なアメリカからやってきたヤンキー文学者たちは、一瞬でヨーロッパ文化に馴染んでしまった。カミングスの『伽藍』が文体やテーマでヨーロッパ文学の影響を受けながら、どこかでそれに反発しているのにはそういった背景があります。
ただコンプレックを含めた異文化との衝突は必要ですね。二次大戦後に世界の中心になったアメリカでは、アメリカ至上主義的な文化が花開きます。面白いと言えば面白いのですが、70年代以降のアメリカ芸術はじょじょに平板になってゆきます。
■ e.e.カミングス著/星隆弘訳 連載翻訳小説『伽藍』『第五章 大部屋の面々』(第34回)縦書版 ■
■ e.e.カミングス著/星隆弘訳 連載翻訳小説『伽藍』『第五章 大部屋の面々』(第34回)横書版 ■
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