鶴山裕司さんの連載エセー『言葉と骨董』『No.060 たぶん、オルメカ』をアップしましたぁ。金魚屋から『夏目漱石論-現代文学の創出』を好評発売中の鶴山さんの骨董エッセイです。中南米の文明はマヤ、アステカ、インカは聞いたことがあるのですが、オルメカは鶴山さんのエッセイで初めて知りました。中央アメリカのメソアメリカ文明では一番古い文明になるようです。
スペインに征服されてもその文化的遺産が存続したのはラテンアメリカも同じである。ラテンアメリカの作家たちが表現の核として追い求めたのは、ほとんどDNAに刻み込まれたかのような中南米の古代文明の記憶だろう。そこまで意識を下降させたラテンアメリカ最良の文学は、新たな文明の発生に似た神話的なものである。ただいくら学問的な考察を重ねても、どうやって新たな文明が生まれるのか、その機微はわからない。そこにはいくつもの大きな飛躍がある。芸術が明らかにするのは決して理性だけでは把握できない文明発生の機微であり、創造の神秘である。
それは骨董にも当てはまる。骨董の世界はデータベースだから、研究者はもちろん骨董好きだって好き勝手に想像力を羽ばたかせることはできない。茫漠とした夢を語りたいなら、浜辺でわけのわからない形になった漂着物でも拾っていればいい。骨董はわたしたちがほとんど無意識領域にまで精神を下降させてある文化の本質を探ろうとするとき、少しだけマジカルな触媒になる。
(鶴山裕司 連載エセー『言葉と骨董』『No.060 たぶん、オルメカ』)
こういった箇所に、鶴山さんの骨董エッセイの特徴が良く出ています。マルケスの『百年の孤独』などはまさに『新たな文明の発生に似た神話的』作品ですね。鶴山さんの骨董エッセイはアトモスフィア(雰囲気)批評ではなく文明批評ですが、『無意識領域にまで精神を下降させてある文化の本質を探ろう』とする試みだと思います。
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