遠藤徹さんの連載小説『ムネモシュネの地図』『第14回 (五)象の肩(ノイマン)』をアップしましたぁ。今回も種山先生の駄弁のオンパレードですが、永遠に続いてほしいと思っちゃいますね。『ムネモシュネの地図』、普通のラノベぢゃないんです。ラノベの形を借りた遠藤さんの思想小説です。遠藤徹という作家の世界観が示されている。それはターゲットさえ正しく設定すれば、多くの読者に届く(理解される)と思います。
金魚屋では単行本の刊行が始まりますが、遠藤さんは是非本を出していただきたい作家さんのお一人です。版元がまず欲しがるのは新鮮な新人作家です。新たな才能を世に送り出すのは文学出版の義務だからですが、新鮮な若い作家の作品には話題性があり、ヒットする可能性を秘めているからでもあります。ただ新人作家は水モノです。安定して書けるとは限らない。どの新人作家もデビュー後に一定の試行錯誤期間を経て、安定した作家になっています。もしくは初期作を残して実質的に文学の世界から消えてゆく。単行本デビューは生き残りの始まりです。
中堅作家は苦労を重ねている方が多いですから、多くの版元の経済を支えているのは安定した質の作品を書けて、一定の読者がいる中堅以上の作家です。ただ純文学系の中堅作家は甘いところがあります。石川は新人に限らず、作家は本を売るということをもっと真剣に考えてくださいと口を酸っぱくして言っています。フリーライターがもの凄い数になって仕事を取り合っている現状を考えれば、作家が売文稼業で稼ぐのは難しい。作家は本を売るという原点に帰らなければ文筆業は成り立たない。しかも金魚屋の設定する売上部数目標はハードルが低いのです。
石川は編集者ですから、作家さんたちより醒めた目で文学の世界を見ています。たいていの作家は本が売れればそれは全部作家の手柄、売れなければ版元が本を売る努力をしないから、と考えがちです。しかし文学者はすべからく、内容が優れていれば必ず本は売れるはずだ、と考えているんぢゃないでしょうか。
もち金魚屋で出した本が売れなくても、作家にその責任を取らせることはありません。しかし本が売れなければ、版元は当たり前ですが次の本を出そうとしません。理由も告げられずに「次の本は出ませんよ」と言われるのがいいのか、本を出す前や出した後に、現実を直視しながら「できる限り売る努力をしましょう」と言われるのがいいのか、どっちがいいのでしょうかということです。作家にも考え協力していただきたいというのはそういうことです。
金魚屋は本のページ数やパッケージデザイン、値段には口を出しますが、作品内容は作家に任せます。作家の資質を見極め好きに書いていただくわけです。ただし金魚屋が第三者の立場から、はっきりとした売り方や売れ筋を掴めない作品は正直本を出すのに躊躇します。納得できるまで次々書いていただきます。作家は自分の作品についてだけは客観的評価ができない生き物ですが、 何が自分の作品の一番の特徴でウリになるのかは、ある程度は考えていただかなくてはなりません。
中堅作家の場合、あまり意味があるとは思えない昔ながらの文学業界ルールで頭がいっぱいの作家さんは、金魚屋とは相性が良くないでしょうね。ただ現代的変化を直視して新しい仕事をしよう、もっと華々しく自己の作品を世に送り出そうと意気込んでいる作家さんたちとは相性がいいはずです。50歳を越えてもいつまでも賞が欲しいとか、既存の文学界で評価されたいとか言ってるようぢゃダメですね。作家の最大の幸福は安定して原稿が書けることと、安定して本になることです。つまり確実に一定読者を抱えることです。それさえ実現できれば誰に評価されようとされまいと作家業を続けられます。
■ 遠藤徹 連載小説『ムネモシュネの地図』『第14回 (五)象の肩(ノイマン)』縦書版 ■
■ 遠藤徹 連載小説『ムネモシュネの地図』『第14回 (五)象の肩(ノイマン)』横書版 ■
■ 第6、7回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■